人材派遣大手グッドウィル・グループは、5月23日に開催された臨時株主総会で、経営再建策に関する決議を見送った。3月に30.39%の株式を買い集め(現在は24.35%)、筆頭株主に躍り出た、ユナイテッド・テクノロジー・ホールディングス(UT)が事前投票で反対を表明し、否決される見通しとなったためだ。6月7日に再び株主総会を開き、決議を目指す。

 グッドウィルは、昨年6月、子会社コムスンの不正請求が発覚し、介護事業からの撤退を余儀なくされた矢先、今年初めには違法派遣で事業停止命令を受けた。“法令違反企業”への風当たりは強く、業績は悪化。昨年12月の中間決算時点で、営業赤字に転落した。

 支援に名乗りを上げたのは、米サーベラス・グループと米モルガン・スタンレー・グループのファンド連合。みずほ銀行よりグッドウィル等に対する貸付債権約1000億円を買い取り、財務リストラ案を突きつけたのだ。

 その中身は、ファンド連合が45億円分の第三者割当増資を引き受けるとともに、貸付債権のうち、155億円分をデットエクイティスワップ(債務の株式化。DES)で優先株に変えるというもの。総額200億円の資本増強により、株主資本比率は6.3%から約13%へ改善する算段だった。

 ところが、UTが待ったをかけた。グッドウィルに質問書を2回送付したが、その返答を不服として、臨時株主総会での反対票につながった。

 UTの主張のポイントは、おおまかには3つ。第1に、株主が株式の希薄化という不利益を被る前に、旧経営陣の私財提供を受けるなど債務を軽減するべきだ。第2に、優先株の普通株への転換価格9000円が低過ぎる。注目したいのは3点目で、ファンド連合が持つ優先株を買い取る際の第一交渉権を得ているのが折口雅博氏であり、それはおかしいというものだ。折口氏と関連企業は、現在約22%の株式を保有する。折口氏は、グッドウィル米法人アドバイザーへ就任しており、グループ内にとどまっている。若山陽一・UT社長は「折口氏の第一線復帰が既定路線となっているシグナル以外の何物でもない」と憤る。

 ここにきて、UTはグッドウィル株式の長期保有を断念した。事態は予断を許さないが、法令違反企業の元経営者が、実権の拡大に動くとするならば批判は避けられまい。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)