ヒル夫妻は自宅に帰るとなにか奇妙な感覚に襲われたといいます。家の中の様子が少し異なっていたり、ドレスの縁やジッパー、裏地などが裂けていることに気がついたのです。とくに妻のベティは、その夜から悪夢に悩まされはじめました。

 彼女は、何回も見るその夢を記録することにしました。その夢は、バーニーと自分がUFOの中に連れ込まれて、さまざまな医学検査をされるというものでした。

 エイリアンは、身長がおよそ5フィート(約150センチメートル)と小柄で、体にぴったりしたユニフォームを着て、キャップをかぶっていました。

 髪の毛は短く、大きくふくらんだ鼻をしていました。

 ベティは、UFOを目撃してから自宅に帰るまでの記憶をほとんど思い出せないことなどから、この夢に見た出来事が実際に生じたものではないかと考えはじめました。ベティは、この出来事をアメリカ空軍に報告するとともに、図書館でUFOについての本を何冊か借り出し、その中の1冊の著者であるドナルド・キーホーに手紙を書きました。

3時間の「失われた時間」
逆行睡眠で思い出した恐ろしい所業

 キーホーは有名なUFO研究家で、民間のUFO研究団体NICAP(全米空中現象調査委員会)の会長でした。NICAPは、何人かの専門家をヒル夫妻のもとに送って、彼らの体験を聞き取りました。

 ここでひとつの興味深いことが発覚します。彼らがその日、車で移動した距離は4時間ほどあれば十分走れるのに対して、彼らが実際に家に到着したのは出発から7時間後だったのです。彼らには3時間の「失われた時間」が存在したのです。

 NICAPの専門家は、ヒル夫妻に失われた時間の記憶を取り戻す方法のひとつとして、逆行催眠(催眠を使って過去の記憶を思い出させる方法。退行させる時間が数時間~数カ月単位の場合、退行催眠でなく逆行催眠という言葉を使うことが多い)を提案しました。