その後、ヒル夫妻が実際に逆行催眠を受けたのは翌年1月になってからでした。担当したのは、ボストンの精神分析医ベンジャミン・サイモン博士でした。サイモン博士は、夫のバーニーと妻のベティにそれぞれ催眠をかけました。
彼らは、自分たちがエイリアンに追跡され、円盤の中に連れ込まれ、そこで医学的な検査を受けたということを思い出しました。とくにバーニーは、円形の装置を自分の性器にはめられて、精液を採取されたことや肛門に器具を押し込まれたことなどを思い出したのです。
ヒル夫妻の誘拐事件が報道されて、広く知られるようになった1975年頃から、アメリカではエイリアン・アブダクションの報告が増加してきます。とくに1978年頃には、まさにアブダクションラッシュといわれるような状況になってきます。
人々は、エイリアンに誘拐されたというニュースを頻繁に目にするようになりました。興味深いことに、UFOの目撃証言はこの頃から減少してきました。人々は、UFOを目撃する代わりにエイリアンに誘拐されるようになっていったのです。
エイリアン・アブダクションにおいて、重要な役割を果たす人物がいます。それは芸術家のバド・ホプキンスです。
彼はアブダクションについて『失われた時間』、そして『イントルーダー』という2冊の本を書いていますが、彼の書いた本の内容はその後の、アブダクション神話の中心的なものになっていきます。
アブダクションの目的は生殖システム?
地球人とエイリアンの混血児も
彼は、アブダクティーの証言をもとに、エイリアン・アブダクションの特徴を明らかにしていきました。まず彼は、「ミッシングタイム」、つまり失われた時間の重要性を指摘しました。ヒル夫妻もエイリアンに遭遇したとき、3時間分の記憶が失われていました。
彼は、エイリアンがヒル夫妻を誘拐し、医学検査をしたあとで夫妻の記憶を消去したため、失われた時間が生じたと考えました。しかし、この記憶は完全に消去されてしまったわけではないので、夢の中にその一部のイメージが現れたりするわけです。