歌手の細川たかしさんとテレビに出て、握手していただいたんですけど、細川さんの手はふっくらしていてやわらかくて、羽二重餅のようでした。
ほかにも、長寿について番組でも取り上げていただいたりしましてね。そうしたら、感心してもらえたのか、県外からも散髪に来てくださる方がいらっしゃいました。
理容師は立ち仕事で足腰を使うし、ハサミを使うから握力も必要なんです。手先が衰えてきて震えるようなことになれば、仕事は続けることができません。だから70歳くらいで引退なさる方が多いんですよね。幸い、わたしの場合は身体のどこも悪くならないので、自分としては当たり前のこととして続けてきただけなんです。
「80歳を超えた現役理容師がいる」と言われるようになって、それが、おかげさまで「90歳」「100歳」と年齢を延ばすことができています。話題にしていただいてありがたいことですから、これからもお客さんとして来てくださる方がいらっしゃるのなら、できる限り続けていきたいと思っています。
102歳までひとり暮らし
それでも寂しくなかった
折りに触れて息子が、前々から「一緒に住もう」と言ってくれていました。大学卒業後、結婚して千葉県で所帯を持っていた息子でしたが、3人の娘(わたしの孫たちです)は独立し、20年ほど前からは、栃木県の宇都宮市に夫婦で住んでいました。
同居するとなると、わたしが宇都宮に行くことになるんでしょうか。孫やひ孫たちと身近に接して、近況を聞きながら暮らしていくのもいいものでしょうけれど、新しい土地にはどうも行きたくなくて。まずそう考えましたので、ありがたいと思いつつ、そのたびに断っていました。
ここでは、朝起きて、お店を開けてお客さんを待って散髪をして、合間に畑仕事をしてね、お友だちとお茶を飲んでおしゃべりをして。「あぁ、今日もよく働いたなあ。おしゃべりもしたなあ、楽しかったなあ」なんて思って、一日を終えるんです。
50年以上そうしてきましたからね、そのくり返しがわたしの人生です。