「老後は絶望」を覆す新事実、定年後も働く人は現役より満足度が高かった写真はイメージです Photo:PIXTA

今の日本には、老後の不安をあおる話や老後はつらくて大変なものだと想像させる出来事が多すぎる。しかし、「日本の老後はそれほど暗いものではない」と思わせてくれる書籍が今売れている。2022年8月に出版され8万部突破(11月22日現在)のベストセラーになっている『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』(講談社現代新書)だ。著者で、リクルートワークス研究所研究員・アナリストの坂本貴志さんに話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

定年後も働き続けることは意外と楽しそう?

――世間一般の老後のイメージは、お金が足りなくて、嫌々働き続けなければいけないという暗い未来かと思います。しかし、今回の書籍の中で、定年後を境に、6割以上の人が仕事に満足感を持っているというデータがありました。定年で責任ある仕事を失って給与が下がっても、満足度を感じている人が現役時代よりも増えているというのは驚きです。

 定年後も働くということは、今や考えざるを得ない状況になっていますが、実際どうなのか意外と知られていないと思っていました。調べた結果は意外で、私も先入観にとらわれていたなと思いました。

 定年後に働くことは、悪いことでもないですし、構えすぎなくてもいいものだと思っています。高齢で、定年後に働いている方々にインタビューしたのですが、表情などを見ていても楽しそうなんです。大変でキツそうな感じは全然しない。

 書籍のメインターゲットは50代くらいを想定していましたが、30代、40代の人も手に取っていて、「意外と老後を心配する必要はないんだ」「明るい気持ちになりました」なんていう感想をいただいています。

――老後に対する不安は年々高まっているように感じられます。

 金融庁の「老後2000万円問題」がきっかけになっているとは思いますが、日本社会は構造的に老後に不安になりやすい状況です。平均寿命が延びたのに、少子高齢化になって国の財政はかなり厳しい。そうした中で定年後も経済的に働き続けなければいけない人が増えているんです。

 ただ、実は改善している部分もたくさんあって、気付かれていないことがあります。