架空の身分証で接触し
摘発を狙う警察当局
永田被告は他にも複数の事件に関わり、広島市ではモンキーレンチで男性の後頭部を殴り24時間介護が必要な怪我を負わせ、50年以上続いた店を廃業に追い込んだと被害者家族の証人尋問で明らかにされた。
また指示役から連絡を受けるたびに犯行がエスカレートしていく状況を明らかにしつつ「どうせいずれはパクられる」と証言。なんとなく「強盗」で検索したら「5年以上」とあり、5年で刑務所を出所できると勘違いしていたなどと述べた。
実は永田被告が控訴したのは、量刑が重いからという理由ではない。判決の最後、口にしたのは「被害者や遺族の心情を考えてください。極刑にしてください」という悔恨と自責の念だった。
検察側の求刑が無期懲役で一審判決が無期懲役である以上、永田被告の願いが叶うことはない。だが謝罪と反省を言葉と態度で示したのは、せめてもの償いの誠意だったのかもしれない。
そもそも、こうした犯罪を生み出さないためには指示役などの根幹を叩かなければならない。
冒頭に紹介した「仮装身分捜査」だが、捜査員が架空の人物になりすまして闇バイトに応募。指示役らから身分証などの提示を求められた場合に応じ、そのまま接触を続けて摘発につなげるのが狙いだ。
捜査員が身分を隠して犯罪を誘発するように働きかける「おとり捜査」とは違い、あくまで闇バイトに限定する。本人確認書類の偽造は一般的に公文書偽造など違法行為になるが、刑法の規定では「法令または正当な業務による行為は、罰しない」とあり、警察庁は法務省など関係省庁と協議し可能と判断したとみられる。
合同捜査本部は今月3日、強盗で奪った現金を実行役から受け取ったり、報酬を振り込んだりしていた資金管理役と見られる京都市の女(26)を逮捕した。一連の事件でこうした役割の容疑者を摘発したのは初めて。これまで逮捕した容疑者のスマートフォンを解析し、女の関与が浮上したという。
平穏に暮らす人々の生活を脅かすならず者が、枕を高くして眠れるのはやはり理不尽極まりない。徹底的に追い詰めるよう、警察当局にはエールを送りたい。