看板業者から始まり、常にリテールの現場の変化を見てきたLMIグループ株式会社は、最もリテールに近い立場で、誰もが簡単に参入できる新しいメディアの研究や開発に取り組んでいる。ここでは、リテールメディアへの新技術の導入を推進し、成長を促しているLMIグループ株式会社の共同創業者であり、取締役副社長を務める望田竜太氏がこのたび刊行した書籍『人を幸せにする広告戦略』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋し、再編集して紹介します。
急激に進化するオフラインのリテールメディア
LMIグループ株式会社 取締役副社長 共同創業者
早稲田大学卒業後、リサ・パートナーズにてPEファンド部門に所属。投資実行・投資先のバリューアップ及び管理業務に携わる。その後、PwCコンサルティングの戦略チームに転じBDD、PMI、業務改革、新規事業創出、DXなど、さまざまなテーマを経験。2020年より取締役COO&CSOとしてLMIグループに参画。2022年3月取締役副社長に就任。新規事業開発に強みを持ち、ビジネスモデル特許を複数発明。
ここで主に解説するのは、現在リテールメディアと呼ばれている分野のうち、いわゆる「オフライン」に関するものです。
ここでいう「オンライン」とは、主に、大手小売が自社ECサイトやアプリなどで展開しているウェブ広告を指します。
一方、本題の「オフライン」とは、店舗などのリアル空間で直接お客さまに対して展開されているリテールメディアです。
現在では、店前の交通量、入店数、店内の動線、掲示物や商品など視認情報、デモグフィック、そして実際に何を購買したかまで、プライバシーへの十分な配慮と両立させながら、かなり詳細につかめるところまで技術的に発展しています。
もうお気づきの方もいるかもしれませんが、これはウェブ広告の得意技、専売特許だった状況に近く、要するにクッキーに書き込まれてきた内容を、リアル空間の動きでも実現するものです。つまり、こうした技術によって、「オフライン」=リアル空間のリテールメディア化は、急速に現実性、実用性を高めているわけです。
ここでは、リアル空間のリテールメディア化を支えている技術のうち、特に重要な3つについて、ここ数年の現状をご紹介します。
単に技術面、機能面で要求を満たせばいいというわけではありません。リアル空間は文字どおりリアルの世界で、そこには働く人も、お客さまもいます。ウェブ広告とは違い、何かの機能を作るには、実際に人が出かけていって設置しなければなりませんし、継続して安定運用することも、データを集めて分析し、PDCAサイクルを回すことも不可欠です。どれか一つ欠けただけで、リアル空間でのリテールメディアは成立しないと言っても過言ではないでしょう。
リテールメディアを支える技術は、とりわけコロナ禍を挟んだここ数年で、大きく進歩しました。技術とは主に、
・AIカメラ……AIを搭載し、映像をただちに分析できる
・デジタルサイネージ……主にディスプレイを用いて情報を表示する
・ビーコン……壁や天井などに取り付け、来店者の動きを把握する
の3つを指します。
そして、それぞれが連関できること、あるいは組み合わせる技術が発展したことが、今、リテールメディアの可能性を大きく広げています。