デジタル化が大きな影響を与えた
電機業界「大再編」の教訓
2000年代初頭まで日本には10以上の家電ブランドがあり、それぞれが同じような総合家電の製品ラインアップを有していた。テレビなどの高額家電は、特に多くのメーカーが参入していて、ひとつひとつのメーカーは市場シェアが一ケタ%であっても利益率が高く、それなりに儲けることができていた。この状況は、これまでの自動車メーカーの状況に似ていると言えよう。その後、電機メーカーを襲った悲劇はデジタル化の波である。
デジタル化すると、基本性能が飛躍的に向上し、各メーカーの努力による機能差、性能差は小さいものになってしまう。そこそこの性能の製品でも、顧客にとっては十分な性能であることもしばしばである。
また、デジタル化すると機能、性能の大部分はソフトウエアによって実現するようになる。ソフトウエアの開発は固定費であり、ソフトが実装される半導体も装置産業であって固定費が大きい。そうなると、規模の経済性がものを言うので、各社はできるだけ拡販して、技術の標準化、外販化を目指そうとする。自社の需要以上の部品を世界にばらまくことができれば、規模の経済性のメリットを享受し、より利益率を上げることができるからだ。
だからこそ、市場競争は激化し、シェア獲得のためのコストリーダーシップ戦略が採られるようになる。価格を下げてできるだけ市場シェアを上げようとするのである。価格を下げたとしても、規模の経済性のメリットが得られる範囲内であれば、利益を上げることができるからだ。
もちろん、価格を下げて利益が得られるのは一部の大手メーカーだけという状況になる。すなわち、デジタル化した市場とは、過度にコストリーダーシップ戦略が進んだ、上位企業総取りの寡占市場になるということである。
デジタル化による淘汰は、スマートフォン市場などでも見受けられる。かつて携帯電話端末は、世界の地域ごとに米国ではモトローラ、欧州ではノキア、日本ではパナソニックのように地域ナンバーワンの企業があり、日本国以内でも2000年代初頭には11社の携帯電話端末メーカーが存在していた。