しかし、携帯電話がスマートフォンになり、主要機能がアプリとして提供されるソフトウエア化、デジタル化が進むと、端末メーカーは淘汰されるようになり、アップルやサムスンなどの一部の強いブランドしか生き残れない市場になった。

 デジタル化した産業では数を追うために、技術の知恵だけではなく、ビジネスの知恵も総動員しなければならない。携帯電話産業においては、アップルやサムスンがスマートフォンでシェアを伸長させる中で、クアルコムは携帯電話端末自体のビジネスは諦め、携帯電話の基本機能を搭載したチップセットの開発販売に特化し、端末ビジネスではライバル同士のメーカーに対して、そのどちらにもチップセットを供給して大きな利益を得ている。1社の端末メーカーの売り上げ以上にソフトウエアと半導体をばらまくための戦略だ。

 これはソニーのCMOSイメージセンサーのビジネスにも通じる話だ。ソニーは、カメラについてはスマートフォンなど自社でもCMOSイメージセンサーを活用した製品を発売しているが、自社の売り上げ以上にCMOSイメージセンサーという半導体を世界にばらまくため、外販にも力を入れている。時には、最新の半導体を自社よりも優先して他社に割り振るようなこともしている。

ホンダと日産の統合は必然
今後は「課題」にどう対応するか

 これらのようにデジタル化、ソフトウエア化した産業は、自社の売り上げ以上にデジタル技術を販売していかなければならない産業であると言える。そこでは日本のメーカーが好きな「いたずらに数を追わず、技術で差を付ける」という技術の知恵だけで小さな売り上げでも利益を出そうとする差異化戦略は通用しづらい。

 その意味で、EVやソフトウエアの分野で協業を開始していたホンダと日産が経営統合に踏み切るのは、自然な流れと言えよう。

 とはいえ、問題も山積している。ホンダと日産の経営統合の報道が流れた後、日産の株価は上昇した半面、ホンダは下落した。経営状況が悪化し売れる車がない状況の日産にとってはホンダとの経営統合はプラスになるが、ホンダにとってのメリットが相対的に小さい。