確定申告では、そこから経費を引いて所得200万円と申告。それは扶養には入れないだろう。年収130万円を超えれば、社会保険に加入する義務が発生する。
「まあもう少し経費を盛れば(増せば)よかったのでしょうが」とA氏が笑う。600万円の収入を得ていて、経費によって200万の所得まで減らすのも十分“盛っている”と思うのだが……。口に出さなくても私の思いが伝わったようだ。A氏は「あのね、フリーは経費で(収入を)ちょろまかしているというけど、俺からすればちょろまかす権利があると思うね」と反論する。
大手企業の会社員と比べると
不公平さはより顕著
「会社員は厚生年金が半分は事業主負担、健康保険だってそう。退職金に対しても課税の軽減措置がある。一方で、フリーのこちらは税優遇が一切ない、将来もらえる年金の額だって少ない。保険料は会社員と比べてほぼ倍の金額。それも会社員時代に加入していた社会保険が終わった、定年退職組が国保に加入して医療費を多く使うから、保険料が高くなる。なぜ国保だけ無職の高齢者と一緒のグループなのか。そういう不公平があるんだから、ちょろまかすぐらい許してやと思う」
大手企業の組合健保に加入する、A氏の妻に給与明細を見せてもらうと、なんと健康保険料が月額1万816円(編集部注/大手企業の場合、労使折半ではなく事業主負担が増額されることが多い)。この健康保険に子ども1人も扶養で加入している。しかも給付サービスを聞くと、驚きの内容だった。
「出産一時金が42万円(現在は50万円)に加算されて、60万円でした。もし何かで入院した場合、私でも家族でも1日5000円の給付があるようです。あと勤務先を通じて入る民間保険料が安くて、家族3人で1ヵ月3500円の保険料のため、加入しています。この民間保険でも、入院した場合1日5000円の給付がありますので、もし家族の誰かが入院したら、組合健保から5000円、その民間保険から5000円で合計1万円が入ります」(A氏妻)
「手厚いですね。人間ドックも受けられますか?」と私がたずねると、「はい無料で受けられます。しばらく受けてませんが……。そういえばあなた、ずいぶん健診を受けていないんじゃないの?」と妻は言葉の最後に、A氏のほうを見る。
「(病に)なったら……死ぬ時は死ぬから」
と、サバサバした口調のA氏。そして「高い国保料を払って、手取りが少なくなって、ろくなもん食えなかったら病気になるわな」と、諦めたように笑った。