「相互扶助、助け合いの仕組み」
という詭弁で課せられる保険料

「1年に1、2回しか病院に行っていないのに、保険料は月に約10万円の支払いでしょう。さすがに高いですよ。僕が保険証を返したい、自由診療がいいと言うと、窓口では『日本は皆保険制度ですから、保険証を返されても困ります。相互扶助、つまり助け合いの仕組みなんです』と繰り返し言われました」

「相互扶助、助け合い」――つまり、みんなで医療にかかれる体制をつくりましょう、ということだ。一見正しく感じるかもしれないが、実はこのような理論はおかしい。

 佛教大学社会福祉学部准教授の長友薫輝氏も「よく誤解されるのですが、国保は“助け合い”で運営しているわけではありません」と述べる。

「例えばテレビコマーシャルでおなじみの民間保険は、サービスを受けたいのであれば保険料を納めなさいという保険原理ですよね。しかし国保を含む公的医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険の5つは社会保険といわれ、個人への保険料だけでなく、事業主にも負担を求め、国が公費を投入し、運営に責任をもつ、国民に加入を義務づけるという面も持ち合わせます。これは自己責任や家族・地域の助け合いだけでは対応できない貧困、病気、失業などのさまざまな問題に対して、社会的施策で対応していきましょうということなのです。ですから加入者に“助け合い”ばかりを強調して過酷な負担を強いるのは、社会保険として考えた時に問題なのです」

 問題だ。困っている。だがそうは言っても、加入者にはどうすることもできず、悔しい気持ちになる。

フリーや自営業者は
「ちょろまかす」権利がある?

 組織から離れて個人事業主となった知人記者A氏も、「国保料が高い」と怒っている。

 A氏は30代後半で企業を退職し、ある有名雑誌の専属記者となった。出版界で多く見られる「業務委託契約」で、A氏の場合なら毎週、編集部内で請け負えない取材執筆を担当する業務である。業務委託契約のメリットはA氏のケースだと毎月固定の収入を得られる上、自己裁量で仕事が進められる点、デメリットとしては個人事業主となるため健康保険は国保へ加入し、高額になりやすい点がある。

 A氏の場合は、彼の妻が大手企業で正社員として働くという安定的な立場。だから夫を扶養に入れられないかと、妻は自身の勤務先に相談したという。「でもあっさりと却下された」と妻。A氏の年収(売上)は、およそ600万円。