お母さんなんて事故とかで死んじゃえばいいのに、って思ったけど、でもよく考えれば、ひとりじゃまだ生活できないからダメじゃん、ってがっかりしたりね。

 本当はもっとちゃんとしなきゃ、とか、お母さんを助けて!って、早くだれかに言わなきゃって、ずっと思ってた。近くにおばあちゃんもいたのに、やっぱり言えなかった。お母さんには病気をもつ弟がいて、おばあちゃんはむかしからその子の世話でずっとたいへんだったから、「凜ちゃん、お母さんとふたりになったんだから、あなたはいい子でいてね」って、私はおばあちゃんに前から言われてたし。

 けっきょく、だれにもなんにも言えなかったんだよね。お母さんと私は、完全に孤立してた。ひとりぼっちっていうより、お母さんと、世界の中で「ふたりぼっち」だった、って感じかな。

見放した父と
買い物依存の母

 お母さんは、お給料が出ると、カードで大量に買い物しちゃうんだよ。高いブランドの服とか、ガンガン買いまくってたんだ。

 お母さんが仕事から帰ってくるのが遅いと、「帰ってこないんじゃないか」「死んじゃったんじゃないか」って不安になって、家中の引き出しとかをあさってた。お母さんの気持ちが知りたかったから、どんな気持ちでいるんだろうって、なにか手がかりになるものがあるんじゃないかって。おとなの人で、お母さんを助けてくれる人がいればいいのに、っていつも思ってたよ。

 父親に久しぶりに会ったとき、「またみんなでいっしょに住みたい?」って聞かれたから、「うん」って答えたの。そしたら、「もう遅いよ。俺ら、おまえがいっしょに住みたいって言わないから別れたんだから」って言うの。じゃあ最初から聞くなよ!って思うけど(笑)、そのときは、やっぱりみんな私のせいなんだ、って思った。

 高校は、ものすごいバカ学校に行ったんだ。お母さんは「そんな学校行くくらいなら、高校なんて行かなくていい!」って、顧書をクシャクシャにまるめちゃったんだけど、じょうだんじゃないよね。私はシワをていねいに伸ばして、願書を出しに行って、入学したの。