先行き懸念を反映したウォン下落
非常戒厳の宣布、大統領の弾劾訴追案可決が、ウォン安に多大な影響を及ぼしている。12月20日までの1カ月程度の間、ウォンの対ドルの下落率は円を上回った。非常戒厳の宣布で、一部の投資家は韓国からの資金逃避の増加に身構えたほどだ。
12月3日の非常戒厳の発表直後、韓国銀行(中央銀行)は急激な海外への資金流出に対して備えていたようだ。コロナショックで世界経済がまひした時も、韓国は急激なドル資金の流出に見舞われ、米連邦準備制度理事会(FRB)によるドル資金供与で窮状を脱した。
今後しばらく、政治不安を背景に、韓国から海外に流出する資金は増えるだろう。報道によると、非常戒厳宣布後の12月6日時点で、韓国国内のクレジットカード利用額は前週から26.3%も減少したそうだ。首都ソウルの減少率は同29.3%だった。非常戒厳はまさしく、経済に打撃を与えたのである。
中国経済の減速や米国の関税政策などもあり、韓国の輸出は伸び悩んでいる。それに加えて国政がここまで不安定になると、内需は冷え込み、雇用・所得環境が悪化するリスクも高まる。こうしたことも、ウォンの売り材料になる。
アジア通貨危機、リーマンショック、コロナショックと、韓国は経済不安が高まった時、基本的には日米などからの資金供与によって窮状をしのいできた。不確定な要素は多いが、当面、韓国の政策運営の迷走は避けられないだろう。
今後、革新派の政治家が大統領に就任して、経済での対中重視、外交での対北宥和(ゆうわ)、対日批判の政策方針に“戻る”可能性もある。そうなると、対中強硬姿勢を取る米トランプ政権と韓国の関係は冷えこむだろう。
加えて、北朝鮮が軍事挑発を増やす恐れもある。朝鮮半島情勢の緊迫化は韓国のみならず日本、そして世界経済にもマイナスだ。非常戒厳宣布後のウォン安は、そうした展開を警戒する主要投資家が増えていることを示唆している。