半導体輸出減で韓国の経済環境は軟化

 一部の政治家と企業の癒着が続くと、経済社会全体で所得、金融資産の保有割合の格差は拡大する。7~9月期、韓国の経済成長率は前期比で0.1%にとどまった(速報値)。世論は景気への不安を強め、尹政権を批判したと考えられる。その流れで夫人の疑惑追及も激化したのだろう。

 もう一つ、韓国経済に懸念されることがある。それは、半導体輸出の伸び悩みだ。1990年代以降、韓国最大の企業であるサムスン電子は、政府の支援を取り付けてDRAMやNAND型フラッシュメモリーなどの量産、低価格輸出体制を確立した。

 リーマンショック後、スマホの世界的な普及で半導体需要が増加すると、韓国の半導体輸出は増加し経済は成長した。これにより、国内の飲食や宿泊などのサービス業も堅調だった。半導体輸出が景気の緩やかな回復を実現する環境下、政財界の癒着などの問題は表面化しづらかった。

 ところが23年、状況は一変した。重要な輸出品目である半導体など電子部品の割合が、自動車関連部門に抜かれたのだ。22年11月末、米オープンAIがChatGPTをローンチしたのをきっかけに、世界的にAI関連チップの需要は急増。韓国のSKハイニックスはAI分野の需要を取り込み、業績を回復させた。

 一方で、世界最大のメモリー半導体メーカーであるサムスン電子の対応は遅れた。労働組合によるストライキも発生した。スマホ、デジタル家電、半導体と複数の事業を運営するコングロマリット体制が、AI分野への集中を難しくした側面は否めない。

 他方、現代自動車や車載用バッテリー大手のLGエナジーソリューションなどは、電気自動車(EV)分野で生産能力を拡充し、大量生産して輸出する体制を確立した。ただし、中国政府の支援を受けたBYDやCATLなどの値下げ攻勢が激化し、米欧でEVシフトは鈍化している。韓国経済がEV関連産業を育成し輸出競争力を高めることは難しいだろう。