“人事部×IT人材”というWIN‐WINな関係を
経済産業省傘下の独立行政法人・中小企業基盤整備機構が全国の中小企業1000社に行った調査(*13)では、「DXに取組済み、あるいはDXを検討している企業」が約30%で、前回調査時(*14)を上回ったものの、「DXの成果が出ている」と答えた企業は、前回の数字を下回っている。中小企業のDXは踊り場にあるようだ。
*13 中小企業のDX推進に関する調査(2023年7・8月調査)
*14 2022年5月調査
芦川 モノによってはIT化、DXしないほうがコストも安く、業務的にムダがないこともあります。DXを積極的に進めている場合でも、「これはやらないでおこう」という判断も必要だと思います。たとえば、路上で人が数取器で行っている交通量の調査をセンサーに変えて、どういう人が通っているかを調べるより、アルバイトを雇ったほうが安くすむはず。ただ、取得するデータ量を増やして、それを分析して、その後、ビジネスモデルや提供価値を大きく変革しようというような目的があるなら、DXとして捉えたほうがよいかもしれません。ゴールを考えたうえでの、適正なDX推進が望まれます。DXと謳っているのに、実態はデジタライゼーションでしかなく、そこに過剰にコストをかけてしまうといった“手段の目的化”は避けるべきです。
インタビューの最後に、芦川さんは、“企業の人事部とIT人材の理想的なかかわり方”を独自の知見から提案してくれた。
芦川 もはや、ITは生活の一部になっていて、会社や組織においてもIT人材やDX人材と無縁ではいられません。これからの人事の仕事は、よりいっそう、IT化・DX推進に傾いていくので、この「HRオンライン」をエンジニアの方が読んで、「なるほど。人事の仕事って、おもしろそう」と感じ、人事の世界に入ってきてほしいと強く願っています。もともとエンジニアの私自身が、いまはこうして人事関連の仕事をしているわけで、人事の仕事に興味を持つエンジニアの方は結構います。きっかけは、「新卒社員にメンターとして向き合ったから」「自社の面接官をやったから」などさまざまですが、なかにはキャリアコンサルタントの資格をとったというエンジニアの方もいます。IT人材が人事の世界に入ってくれば、他の人事の方とITのスキルも共有しやすくなります。システムで会社を支えるエンジニアの方と、人材採用や育成で人を支える人事の方は根っこの部分が似ていて、縁の下の力持ちタイプの人が多いですね。人事だけでなく、エンジニアも一緒になって「ライトアップエンジニア」を実現することによって、人事も輝くと信じています。私たちLeINは、「ライトアップエンジニア(Light up engineer)」の実現の先に、「ライトアップエブリワン(Light up everyone)」を実現する未来を見据えています。