ドン・キホーテの店舗で販売されるユニークな総菜やお弁当シリーズ「偏愛めし」。その奇抜すぎるラインナップが2024年、SNSでたびたび話題を呼んだ。商品開発責任者の犬塚康太さんに誕生の経緯や開発の裏側を伺うと、令和の時代に合った“逆転の発想”が浮かび上がってきた。(ライター 徳重龍徳)
「みんなの75点より…」
ドン・キホーテの偏愛めしは「みんなの75点より、誰かの120点」をコンセプトに、2023年11月にスタートした。フライドチキンの皮だけをおかずにした弁当「フライドチキンの皮だけ弁当」など尖った商品の数々で、SNSでたびたび話題になっている。
個性的な商品誕生のきっかけについて、偏愛めし商品開発責任者の犬塚さんはこう語る。
「ドン・キホーテでお弁当やお総菜を販売していることを知らないお客様が多く、購入を目的にしていないという意見がほとんどでした。現在の中食文化を考慮し、弁当・総菜部門を強化しようとした中で、おにぎりのツナマヨやのり弁といった定番商品を強化しても差別化は難しいと感じました」
そこで注目したのは、ドン・キホーテが得意とする「特化」戦略だった。
「弊社はカラーコンタクトであったり、お酒でもテキーラが売れたりと特化した業態を深掘りしている。小さい池で大きい魚を狙うのが得意な企業。そこで立ち上がったのが『みんなの75点より、誰かの120点』をコンセプトに掲げた偏愛めしです」
偏愛めしの発売当初から人気を得た商品が、容器の限界ギリギリまであんを詰めた「あんだく溺れ天津飯」だ。その商品自体も開発者の“偏愛”から生まれたという。
「天津飯は開発者自身の『丼ものを食べていて、最後に白いご飯で終わるのが許せない』という個人的な経験からスタートしています。あんと白いご飯のバランスを見てペース配分をしながら食べるのではなく、最初から最後まで同じペースで食べてもあんが残るようにしたいという点を切り口に開発されました」
しかし過去にはない個性的な商品なだけに、問題もあった。