日本の自動車関連企業に必要な生き残りの道
電動化やソフトウエア・ディファインド・カー(SDC、あるいはソフトウエア・ディファインド・ビークル〈SDV〉)に対応するためには、企業の経営体力の強化が欠かせない。日産とホンダの統合は、まさにそうした狙いがあるだろう。
ただ、事業規模を大きくすれば、生き残れるというわけでもない。それほど世界の自動車業界は単純ではないはずだ。
今後も自動車の電動化に関して、日米欧中の競争は熾烈(しれつ)化するだろう。特に、中国政府はBYDなどの完成車メーカー、CATLなどの車載用バッテリー、上海エナジーなどのバッテリー部材企業に手厚い支援を実施し、圧倒的なコスト競争力を確立している。
わが国メーカーが熾烈な価格競争を回避するには、新しい技術をいち早く実用化し需要そのものを創出することだ。全固体電池など新しい技術を使ったモデルを投入できれば、日本の自動車関連企業が電動化に対応することは可能だろう。
一方で、自動車のソフトウエア化に関しては、日本企業の対応力は今一つ見通しにくい。ハード面のすり合わせ技術では世界的な競争力を発揮したが、アプリ開発などのソフト分野は、日本企業はあまり得意ではないように見える。
わが国企業は自前主義に固執せず、もっとオープンイノベーションを志向すべきだろう。内外のIT先端企業、自動車関連企業との業務・資本提携や、買収戦略の重要性は高まっている。提携や買収を通して幅広いソフト開発、実用化の選択肢を手に入れることができるはずだ。
国内の有力メーカーがプラットフォームを構築し、そこへITやソフト開発企業がノウハウや技術を持ち寄る。車両の生産を他社に委託する、水平分業のビジネスモデルを考えるべきだろう。
環境変化のスピードは、速くなりこそすれ遅くなるとは考えにくい。過去の経験則が当てはまるとは限らない。大切なのは、経営者の迅速かつ的確な意思決定だ。
判断が遅れれば、国内企業が海外企業に買収され、サプライヤーの削減など産業構造が悪化するリスクが高まる。25年は、自動車大手が新潮流にどう対応するかが、目の離せないトピックである。