ホンダは現場第一、日産はクール…真逆の社風に振り回されるサプライヤーの命運Photo:Diamond

ホンダと日産自動車のサプライチェーン企業は合計4万社超に上るそうだ。このうち両社と取引があるのは9000社超で、売上高1億円未満が約2割を占めるという(帝国データバンク調べ)。ホンダ×日産の統合が実現すれば、部品メーカーなどサプライヤー企業はどんな変化を迫られるのか。メリットとデメリットは何か。(未来調達研究所 坂口孝則)

ホンダと日産が統合に向けた協議
サプライヤーはどんな変化に迫られる?

 ホンダと日産自動車、三菱自動車が経営統合に向けた協議を始めると発表した。3社の社長が並んだ会見では、あくまで現時点では協議を始めるのであって、経営統合が決定したわけではないと強調していた。日産の株主には仏ルノーがいる。また、三菱自動車は自社にメリットがあるかどうかを見極めたいようだ。

 統合が検討される背景には、日産自動車の経営不振がある。加えて電気自動車(EV)をはじめとする次世代車の開発競争の激化がある。特に、米テスラや中国BYDといった新興勢が牙を剥く。次世代車には巨額の開発費用が必要で、効率を上げるためにも合従連衡が有益ではないか、というわけだ。

 この統合が実現すれば生産台数は700万台強、世界第3位の巨大な自動車メーカーグループが誕生する。必然的に日本の自動車産業、特にサプライヤーに大きな影響を与える。3社の立場からすると、統合すれば購買量をまとめることでボリュームメリットを得ることができる。一方、サプライヤーの再編成は不可避であり、このインパクトは大きい。

統合によって得られる
メリットとデメリット

 ところで、「統合すれば全て万々歳」「大きくなればメリットだらけ」というわけでもない。自動車メーカーが巨大なほど良いのであれば、ドイツのフォルクスワーゲンが今これほど苦境に陥っているはずがない。統合するなら、誰がどのようにリーダーシップを発揮するか、実際にどれほどの効率化のために血眼になって努力するか、が成功のための前提条件となる。統合によって得られるメリットとデメリットを冷静に考えてみよう。