電動化・ソフトウエア化の大変革の影響

 自動車の需要はどうなるのか。中長期的には、主要先進国でもエンジン車からEVやPHVなどの電動車へ移行すると予想される。EVの場合、自動車の製造方式はエンジン車における「すり合わせ製造技術」から、デジタル家電などで主流の「ユニット組み立て型」に移行する。

 また、計算方法にもよるが、EVのコストの3~4割は車載用のバッテリーが占めるといわれている。トヨタがバッテリー生産体制を内外で拡充しているのは、エンジン製造技術という比較優位性が低下するリスクがあるからだろう。

 米国では、ドナルド・トランプ氏による新しい政権がスタートする。トランプ氏は関税を重視し、国内で販売する完成車および部品に対して、米国で生産するよう求める考えだ。

 一方、ASEAN諸国ではEV関連のサプライチェーンを整備して産業を育成する動きが活発だ。そして、中国政府は新エネルギー車の生産・販売の支援策を継続する。こうした背景から、自動車生産は、最終消費者に最も近い場所でコストを抑え、需要にあった車種を生産する必要性がこれまで以上に高まっている。

 もう一つ大事なのが、ソフトウエア化だ。米国や中国では、ソフトウエアの更新によって自動車の性能を向上させる技術が実用化されている。AI(人工知能)、光半導体、通信衛星などIT先端技術の進歩とともに、ソフトウエアが自動車の社会的な役割を大きく左右する時代が迫っている。

 ソフトウエアのアップデートによって、バッテリーの寿命が延びる。あるいは、新しいソフトウエアの配布により、自動運転性能や事故回避能力が高まる。こうした高度化により、走っている車同士でデータをやり取りするとか、車内で映画や音楽を楽しむこともできるようになる。まさに、ソフトウエアが、車の新しい価値を創造する。

 あと10年もすると、自動車メーカーの収益源は車両販売後のソフトのメンテナンスが中心になる、と予想する専門家もいる。それに伴い、エンジンなどの製造技術を磨くことよりも、ソフト開発重視へ、自動車のビジネスモデルは変化するだろう。