田中部長「サムさん、あなたの評価は5段階中の4でした」

サムさん「えっ、5じゃないんですか!?個人目標はちゃんと達成しましたよね?」

田中部長「後輩への指導が若干足りないと感じたので、そこが減点となりました。もう少し後輩の面倒を見てくれたら、次回は評価を上げるつもりです」

サムさん「私の指導のどこが問題ですか?聞かれたことには全部答えていますよ」

田中部長「それはわかっているけど。聞かれなくても教えてあげてほしいんだよね」

サムさん「それは職務規定書に書いてありましたっけ?そもそも、なぜ後輩に何でもかんでも教えないといけないんですか?納得できません」

田中部長「(まごまごしながら)確かに規定にはないけど。チームのレベルの底上げが、部全体の目標になっているのは知っているよね?」

サムさん「それが個人の評価にも影響するなんて、どこにも書いてないですよね?とにかくこの評価は受け入れられないので、考え直してください!」

田中部長「そんなこと言われても……」

 あらら田中部長、完全にやりこまれてしまいました。日本人部下であれば、ここまでの逆襲を受けることはないのでしょうが……。

自己主張は「わがまま」ではない
競争で勝つためには必要なこと

 和の精神を持つ日本人は、意見をぶつけ合うことを避ける傾向があります。意見の対立はマイナスのほうが大きいからです。主張が強すぎると相手から疎んじられ、関係がギクシャクしかねません。だから同意できなくても異論を唱えず、何とか落としどころを見つけようと心がけます。

 よい話し合いのキーワードは、「穏便」「なごやか」「平和的」。みなさんも話し合いの場では、波風を立てないことを優先しているのではないでしょうか。

 外国人材の場合は、必ずしもそうとは限りません。サムさんのように、日本人にはあまり見られないリアクションをする人をたまに目にします。

 激しい競争社会で育った人にとって、主張するのはあたり前のことです。自らアピールしないと生き残れない環境だからです。また、多様な人が共存する「周りと違ってあたり前の社会」では、思ったことを口にしないと自分の存在が認められません。このような社会では、自己主張は競争に勝つために不可欠な手段となります。日本で働く外国人の中には、こうした環境で育った人が少なからずいるのです。