今春から6両を5両に減車
輸送需要の急回復に懸念も
独立系地方鉄道だった総武鉄道は、戦時中の経営統合で1944年に東武鉄道と合併し、東武野田線となった。東武は当時、全線単線だった野田線の複線化に着手する。
複線化率は1960年に7.3%、1970年に15.8%、1980年に30.9%、1990年に42.7%、2000年に58.2%、2010年に65.1%となり、半世紀をかけて一定のペースで着実に進められてきた。最終的に2019年12月に高柳~六実駅間が複線化され、春日部~運河駅間を除き、全線の71.3%が複線となった。
これを受けて2020年3月のダイヤ改正で運河~柏~船橋駅間で急行運転を開始し、あわせて最大30分程度、終電を繰り下げた。折しもコロナ禍が直撃し、JR・私鉄各路線は終電の繰り上げを表明したが、野田線は意地なのか、今も繰り下げた終電を維持している。柏駅を平日0時50分に発車し、1時16分に七光台駅に到着する列車が現在、日本で最も終電が遅いという。
そんな野田線には今年春、「60000系」に続く新型車両「80000系」の導入が始まり、数年内に既存の8000系、10030系を置き換える予定だ。昨年末に大阪の近畿車輛工場から第1編成、第2編成が運び込まれており、最終的に25編成が新造される。
ただこの「80000系」は、従来の6両編成から減車されて5両編成となる。既存の「60000系」も5両化し、取り外した1両は「80000系」に組み込まれる。東武はこれをサステナビリティと主張するが、そもそも5両化して大丈夫なのだろうか。
野田線に5両編成の新型車両を導入すると発表されたのは2022年4月のことだ。プレスリリースは「現行6両編成の列車を5両編成化することで、さらなる省エネ化を図り環境問題に対応し、また5両編成化後も適正な列車本数の維持に努めることで、新しい生活様式に伴うご利用状況の変化に対応してまいります」と説明していた。
だが、2022年4月の発表ということは、2020~2021年に検討された計画だ。2018年度比の輸送人員は2020年度が76%、2021年度が83%であり、1両の減車つまり輸送力を83%にしても釣り合う計算だった。しかし、その後、輸送需要は急速に回復し、2022年度は91%、2023年度は95%まで戻っている。