なぜフッ素が虫歯予防になるのか?
期待できる三つの効果
そもそも歯科でフッ素の使用を勧めるのは、主に三つの効果が期待できるからです。
まず、「再石灰化」。歯の表面のエナメル質はハイドロキシアパタイトという成分に覆われています。口中はpH7程度の中性に保たれており、pH7以下になると酸性に傾き、さらにpH5.5以下になるとハイドロキシアパタイトの成分である歯の表面のカルシウムが溶け始めます。これを「脱灰」といいます。
しかし、唾液の力によってpHは中性に戻り、脱灰した歯はカルシウムを取り込んで修復されます。これが再石灰化です。歯は脱灰と再石灰化をくり返しており、pHのバランスが保たれていれば虫歯になることはありません。
そして、フッ素を使用することによって、再石灰化を効率よく促進することができます。ごく初期の虫歯であれば、フッ素の塗布によって修復も可能です。
次に、「酸生成の抑制」です。先述したように口中がpH5.5以下の酸性に傾くと、歯の表面のカルシウムが溶け始めます。しかし、フッ素が口中に存在することで酸性に傾きにくくなります。
ダメ押しは、「耐酸性の向上」です。フッ素によって歯の表面は、ハイドロキシアパタイトからフルオロアパタイトという成分に変化します。これによって歯の表面のカルシウムが溶け始める数値はpH5.5からpH 4.5まで下がります。つまり、酸性に対する耐性がハイドロキシアパタイトよりも向上するのです。
さらにフッ素には抗菌作用もあります。そのため、乳歯や大人の歯に生え変わったばかりの歯など、特に虫歯になりやすい時期の歯に対して継続的にフッ素の塗布や歯磨き粉を使用することは、虫歯予防の観点から非常に有効です。
ただし、それだけで虫歯が予防できるわけではありません。「フッ素を塗布したのに虫歯になってしまった」と訴える保護者がいらっしゃいますが、フッ素が予防の全てではないこと、歯磨きによるプラークの除去、フロスの使用、間食習慣の改善がなければ虫歯を予防できないことをお伝えしています。
歯科でフッ素を塗布する時期についてもよく質問をされます。当院では幼若永久歯(生えて間もない永久歯)がある年齢、平均的には14歳くらいまでは継続したほうがよいと考えています。もちろん、知覚過敏や慢性的な虫歯への効果を考えると年齢に制限はなく、大人でも効果があります。