3歳と6歳では異なる…!
知っておきたい歯磨き粉の適正量

 フッ素のメリットについて伝えてきましたが、虫歯予防につながるからといって大量に摂取するのは危険です。保護者にも使用量の上限はあるので注意してくださいと必ずお伝えしています。

 フッ素の過剰摂取は中毒症状を引き起こします。急性中毒は一度に大量のフッ素を使用することで嘔吐症状などが出るものです。歯科で塗布するフッ素は市販の歯磨き粉の規定よりもフッ化物濃度が高いものであり、医師が濃度や使用頻度に注意することでリスクを回避することができます。

 慢性中毒の症状としては、歯のフッ素症、骨のフッ素症があります。小児の場合、顎骨内で永久歯の歯胚が形成されており、その時期から頻回な歯科でのフッ素塗布に加え、家でもフッ素を大量に使用している場合、歯や骨のフッ素症になる可能性が否定できないという報告があります。

 歯のフッ素症は、歯に白濁や白斑ができるものです。日本では心配はありませんが、フッ化物濃度が高い飲料水を使用している地域で見られます。骨のフッ素症は骨のエックス線不透過性が増加するのが初期症状です。ひどくなると手足の自由がきかない、骨の異常などの症状が出ますが、めったに見られません。

 慢性中毒症状はかなり長期間、大量に摂取した場合に起こるものなので、仮に誤って飲み込んでしまっても過剰に心配する必要はありません。

 また、歯科の高濃度のフッ素だから危ない、家庭向けの低濃度のフッ素だから大丈夫、といった話ではなく、適切な量・回数で使用することが何より重要です。フッ素を継続的に飲み込んでしまうのを避けるために、フッ素による虫歯予防を始めるなら、口中のものをしっかり吐き出せるようになってからをお勧めします。

 なお、フッ素入りの歯磨き粉については、年齢ごとに使用量、フッ化物濃度の基準が示されています。最新は23年1月、日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4学会合同で「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」として新たな基準が発表されました。
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/news/2023/news_230106.pdf

 0~5歳までに推奨されるフッ化物濃度が500ppmF(泡状歯磨剤であれば1000ppmF)から1000ppmFに変更されるなど、年齢によっては濃度や量が増えています。ちなみに市販の歯磨き粉の規定はフッ化物濃度が1500ppmF以下ですが、今回の基準では6歳以上であれば、成人や高齢者と同じ1500ppmF(日本の製品を踏まえ1400〜1500ppmF)の濃度が推奨されています。

 つまり、6歳以上と3~5歳では歯磨き粉の使用量もフッ化物濃度も異なるため、保護者が適切な量を把握しておくことが大切です。この推奨量が変わったことで、「使い過ぎではないか?」と不安を感じている保護者もいましたが、濃度が上がってもきちんとうがいをして吐き出せば問題ありません。

 また、1~2回程度間違って濃度の高いものを使ってしまったからといって中毒になることはありませんので、安心してください。6歳以上でも濃度について心配な場合は、3~5歳に適した歯磨き粉から選ぶことをお勧めしています。