そこに目をつけたのが転売ヤーである。回線契約との同時購入によって格安で入手したスマホを、回線は解約したうえで転売するのだ。スマホが高額化し始めたタイミングだったことも好都合だった。回線契約時にはタダ同然でスマホを手に入れられても、機種変更時には、ほぼ定価で買わなければならない。

 利用者にとって大きな負担となっており、より安価な中古品や転売品への注目も高まっていた。自身や動員した契約要員の名義で、大量に値引きスマホを購入し、フリマサイトなどで転売して利鞘を稼ぐ行為が以前に増して活発になったのだ。

2019年に落ち着いたスマホ転売
たった2年後に活性化した理由

 政府の方針によって始まったスマホ転売ブームが収束に向かうこととなったのも、やはり政府の方針がきっかけだった。

 2019年、電気通信事業法の改正を機に、回線契約を条件としたスマホ端末の値引き額に、税込2万2000円という上限が課されることとなった。それまでは5万円ほどのスマホでも回線契約とセットであればタダ同然で仕入れることが可能だったが、この上限設定により最低でも2万8000円は支払わなければならなくなったのだ。利鞘が減ることになったスマホ転売は一旦、落ち着きを見せ始める。

 ところがそれから2年しないうちに、再びスマホ転売が活発化し始めた。引き金となったのは、2020年に発足した菅義偉政権下で行われた携帯電話料金の引き下げだ。

 2021年2月には政府の要請に応じ、NTTドコモが従来の半額以下となる新料金プラン「ahamo」を発表すると、次いでソフトバンクとKDDIも「LINEMO」、「povo」という類似の格安プランを打ち出した。

 その成果は国民からは評価されたが、携帯電話事業者は苦境に立たされる。特に影響が大きかったのは、安価にサービスを提供していた格安携帯会社だった。

 正式には仮想移動体通信事業者(MVNO)と呼ばれる各社は、無線通信回線網の開設や運用を行わず、大手3社などが持つ回線網を借用し、自社ブランドでサービスを提供している。顧客対応をネットのみとすることなどによってコストカットを実現していた。

 ところが、政府の要請による大手の新料金プランで、両者の価格差が縮まり、MVNO各社は危機を感じていた。そこで各社は新規契約に様々な特典を用意し、顧客を確保しようとしたのだ。大手3社も反撃攻勢に出たMVNOと同じ土俵に上がるかたちで、新規契約の特典合戦が激化していく。