「一般の通販ですと、注文するのに待たされる場合があります。その間に注文を辞めてしまうお客様が少なくありません。大きな機会損失です。しかしテレAIは、AI音声が対応するため、待ち時間ゼロなのです。その結果、導入企業はコールセンターの人件費を大幅に削減できたのです。一般に、コールセンターは1着信800円から1000円の人件費がかかると言われています。でも、テレAIならば大幅に削減できるため、業務の効率化につながるわけです」

 受注の機会損失を減らし、経費の削減もできるとあって、導入する企業が増えている。

トシちゃんの声が青汁をおススメ…AIを活用した超アナログな“推し活コマース”を、企業が続々と導入するワケ複数の商品をまとめて購入できるテレAIカート。こちらも電話で簡単に注文できる
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 実はテレAIの開発は、平野社長の体験が原点にある。

「コロナ禍の時期でした。私の母は基礎疾患を持っており、外出ができないため買い物に行けない状態だったのです。それで私に買い物をしてほしいと連絡がありました。スーパーに行ってみると若い人は見当たらず、店にいたのは高齢の方ばかり。ネットを利用できない方たちが、外出して買い物する姿を目の当たりにして、この状態を解決できないかと考えるようになりました」

 もともとテレAIは、こういった「買い物難民」問題を解決するために開発されたサービスが起業のきっかけだった。高齢者の多くがスマホは持っていても、ネット操作が難しく、通販で買い物ができない状態にある。しかし彼らは、電話やSMSといったシンプルなコミュニケーションツールは使っている場合が多い。そのため、同社は「電話」を使った新しい通販モデルを開発したのである。

「弊社のサービスは、増加する買い物難民の救済に貢献できていると自負しています。テレAIを通じて、高齢の方が地域社会とのつながりを持つ機会が増え、買い物自体がコミュニケーションの場にもなっているのです。さらに、注文後の確認やサポート電話など、人の手が必要な部分も取り入れることで、ホッとできる温かいサービスになっています」

 テレAIは、「買い物を楽しむ」という本質に立ち返ったサービスを提供することで、新しい価値を作り出している。高齢化社会において、今後需要が拡大していくことは間違いないだろう。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))