純米酒を飲むことは、
日本の農業と緑を守る大切な仕事
麹から始まる日本の伝統的酒造りが、2024年12月、ユネスコ無形文化遺産に登録された。日本酒の味は原料米が要だ。愛知の山忠本家酒造の山田昌弘さんは、亡き父から米農家との絆を受け継ぎ「酒造りを支える米農家に未来を期待される酒蔵になりたい」と語る。秋田の新政酒造の佐藤祐輔さんは、市内の鵜養(うやしない)地区全てを農薬不使用の酒米の里に変えた。栃木のせんきんの薄井一樹さんも佐藤さん同様に地元で米を育て、木桶を新調し、生酛造りで13%原酒という低アルコールの酒造りに邁進する。
日本の米総生産量700万トン弱のうち、山田錦を1万トン使う「獺祭」。山口の旭酒造の桜井博志さんと息子の一宏さんは「米農家に夢を持ってもらいたい」と7年前から「最高を超える山田錦プロジェクト」を開催。グランプリ米の賞金は60俵3000万円。条件を満たした山田錦は1俵5万円で購入する。重視するのは、心白が小さく玄米の中心に発現するという独自基準だ。
新しい動きは米農家からも。一つの田圃の酒米で仕込む純米の酒を、企画から販売まで行う米農家の名古屋敦さん。山が健全であれば圃場や水、地域も良くなると考え、それに共感した米農家の藤本圭一朗さんと兵庫県加西市の酒蔵、富久錦で生酛の委託醸造を開始。放置林の竹を堆肥にし、杉の間伐も行い、農家と酒蔵、飲み手を結び、未来へつながる酒米産地を目指す。