映画『ジークアクス』は、公式がずーーーっっと「ネタバレ注意!」や「ネタバレ自粛にご協力を」といったことを呼びかけてきていた。
ガンダム初心者からすると仮にその「ネタ」を知れたとしてもどこがどうネタバレになっているのかわからず、筆者の場合だと実際に観に行って「これのことを指しているのかな」となんとなく当たりをつけることができたわけだが、往年のファンからするとそれはもうとんでもないネタバレらしく(そしてとんでもなく興奮するネタバレ)、鑑賞済みのファンは同好の士への思いやりとワクワクから入念にお口チャックして「早く劇場で体感せよ」と言い続け、未鑑賞のファンは「早く劇場に行く!」と鼻息荒く、鑑賞直後のファンは「ネタバレ踏む前に観ることができて本当によかった」と嘆息した。
この空気の中で劇場に足を運ばずにいることはガンダムファンにとってかなり難しかったはずで、おそらく相当な割合のファンが鑑賞に趣き、そして話題となった。
話題となれば、非ファン・一般人も興味を持つ。そして観終わって「ガンダム未履修でも面白かった」と言い、それを耳にした人たち(筆者はこの層)がさらに劇場に足を運ぶという、口コミのお手本のような成功の仕方を示している。それもこれも公式の「ネタバレ自粛」の呼びかけが呼び込んだ話題性であった。
劇場版先行公開と「ネタバレ自粛呼びかけ」の効果
テレビ放送前に、劇場版として先行公開したやり方も大当たりである。少し形は違うが、アニメ『推しの子』は初回放送は90分拡大版であり、アニメ『葬送のフリーレン』も初回が2時間、しかも金曜ロードショーで放送という異例の展開で、話題を呼んだ。
『ジークアクス』はあえて劇場版先行公開を行ったことで、上記ネタバレ自粛の呼びかけ効果も相まって、大きな話題となり、もし先行劇場版がなければTVシリーズを観ていなかったであろう人たちを取り込むことができたはずである。
また、『ジークアクス』の上映時間81分も、初心者にとっては足を運びやすい短さである。面白い映画は時間がすぐ過ぎるが、フィットしなかった映画は鑑賞がそのまま苦行である。だから上映時間が短く、リスクも少なく見える81分はビギナーにとても取っつきやすい時間設定だった。
なお、かねてからガンダムのファンだった人たちは『ジークアクス』をどう評価しているかというと、これも概ね好評である。ネガティブ評が少ないわけは、どうも「ネタバレ」に当たるパートがガンダムファンを深く深く満足させていることが関係してそうである。「シリーズ中ベスト」と明言するファンも散見された。
鑑賞前は、「そこそこ面白いのかな」程度にたかをくくってた筆者だったが、予想を遥かに上回る面白さで、いい意味で裏切られた。テレビでの放送をすっかり待つつもりでいるが、我慢できなくなったら2回目の劇場に足を運ぶつもりである。