一流のアスリートは
対戦相手をけなさない

 また、何人か集まってお酒を飲んだりすると、その席にいない人の噂話になることが多いですが、私はそういう話にもなるべく参加しないようにしています。話を向けられたら「よく知らない」「分からない」というスタンスを貫いて、「言わざる」の姿勢を決め込むのです。立ち話で誰かの噂をしているような場からは、さりげなく立ち去ることもあります。

 それに、批判、悪口、SNSでの誹謗中傷など、他人へのマイナスの発言をしてしまうと、必ずと言っていいほどつまらない厄介事が自分に返ってきます。因果応報の戒め通り、他人へのマイナスの言葉はこだまのように自分へ返ってきて、結果的に自分の立場や評価を下げることにつながってしまうのです。

 そう言えば、一流のアスリートは決して対戦相手をけなすことはせず、逆に相手のプレーをほめたたえます。メジャーリーガーのインタビューなどを見ていても「彼はベストピッチをした。ホームランを打てたのはたまたま自分がほんの少し上回れただけだ」といった受け答えをしている選手が多いですよね。それは、相手の悪口を言ってしまったら、結果、それが自分に返ってきて自分のパフォーマンスに悪影響をもたらすということを重々心得ているからなのでしょう。

 とにかく、たくさんの人間がたむろする社会の中で自分の立場を守り、自分のパフォーマンスをいつも通りに維持していきたいなら、他人のことに関しては「口を慎むこと」を徹底するべき。それは、群れ社会の中でつつがなく生き抜いていくために、私たちが守るべき最低限のルールなのではないでしょうか。

本当に大切な人間関係は
10人程度に絞られる

 前の項目では「見ざる・言わざる・聞かざる」が人間関係を無難にやり過ごす基本だと申し上げましたが、これは別に「他人との関わりを避けてつながりをシャットアウトしろ」ということではありません。

 人間は「群れ」の中で生きる動物であり、決してひとりでは生きていけません。他人や周囲とのつながりなしには生きていけない以上、そのつながりを大切にしていかなくてはならないのです。

 ただ、誰とでもつながればいいというものではありません。つながらないほうがいい人もたくさんいるし、つながりたい人の中にも、浅くつながりたい人と深くつながっておいたほうがいい人がいるでしょう。つまり、どの人とどうつながるかの「つながり方」が大切なのであって、それを見極めるために他人のことをちゃんとよく観察しなさいということ。