私はそのために「見ざる・言わざる・聞かざる」のスタンスをうまく活用していくことをおすすめしているわけですね。

 幼い子どもに対してはよく「誰とでも仲よくしなさい」などと言いますが、知り合い全員と仲よくするというのは絶対に不可能なこと。誰とでも仲よくするようなことを目指したら、たちまち悩みやストレスがたまって心や体の調子を崩してしまうことになるでしょう。だから、誰と親しくつき合って誰と距離を置くかをしっかり見極めて選別をすることが肝心なのです。

 私は常々、本当に大切な人間関係のつながりは10人程度に絞られるのではないかと思っています。みなさんもご自身の交友関係を振り返ってみれば、心の底から大切にしたいと思える人はそう多くないのではないでしょうか。

合う人は合うし
合わない人は合わない

 中でもとりわけ大切にしたいのは、「この人とは不思議なくらいウマが合うな」と感じる人です。人と人の「ウマが合う/ウマが合わない」はおもしろいもので、何度顔を会わせても「この人とは合わないな」と思ってしまう人もいます。

 その一方で、たった一度、短時間会っただけでフィーリングが合致してすっかり意気投合してしまう人もいます。きっと、そういう人は、長くつき合えばつき合うほど分かり合える友人になることでしょう。ですから、こういった自分の「合う/合わない」の感覚に素直に従って、つき合う人を取捨選択すべき。そのうえで、ウマが合う人と、親しく気持ちよく、末永くつき合っていけばいいのです。

 なお、一番ダメなのは、合う人とも合わない人とも同じ距離感でつき合おうとしてしまうことです。ヘンに遠慮をしてウマが合う人と距離を縮めないのはもったいないですし、ウマが合わない人とも平等に親しくつき合おうとするのは時間と労力の無駄というものでしょう。

 人間関係は「合う人は合うし、合わない人は合わない」としっかり割り切ったうえで、合う人とは距離を縮め、合わない人とは距離を置いて、人によってつき合う距離感を変えていくべきです。私は、そういうふうに、人によってつながり方を変えていくのも、自分の中に培っておくべき大切な行動ルールだと思っています。おそらく、こうした「割り切ったつながり方」をすれば、それだけで人間関係の悩みやストレスは大幅に減るのではないでしょうか。