ANA/JAL、外資系エアライン、LCC(格安航空)など航空会社の国際線の新規開設に関して、2025年こそ実現してほしい都市を9カ所、ランキング形式で紹介しよう。(ライター 前林広樹)
インバウンドや乗り継ぎの需要あり
日本発着の新規路線開設に期待大!
コロナ禍が収束しても、円安や物価高の影響などもあり、日本人の海外旅行需要は完全回復していない。しかし、意外にも日本発着の国際線には新規路線開設が多数、期待されていることをご存じだろうか。訪日外国人(インバウンド)客や北米~アジアを行き来する乗り継ぎ客の需要が旺盛だからだ。
そこで、過去に就航または運航再開を“匂わせ”た報道の中から、筆者が2025年こそ実現可能性が高いと独自に推測する都市を9カ所厳選したので、ランキング形式で紹介しよう。
1位リヤド(サウジアラビア)
「リヤド航空」が2025年に参入へ
2025年に就航が期待される都市ランキング、1位はサウジアラビアの首都リヤドだ。サウジアラビアは今、サルマン皇太子がリーダーとなり、女性の権利拡大や観光ビザの導入など社会・経済・政治の多方面で改革を進めている。
航空網の拡充も課題の一つで、UAEやカタールに追い付け追い越せと、中東経由で世界各地に向かう需要を取り込む戦略だ。このため、サウジアラビア航空に次ぐ第二の国営エアライン「リヤド航空」を設立し、25年の就航を目指している。
同社はすでにボーイング787やエアバスA321などを数十機規模で発注しており、最終的にはエミレーツ航空やカタール航空に対抗する高水準なネットワークとサービスを目指すという。25年の就航予定都市の中には「東京」の文字があり、同社CEOが日本経済新聞のインタビューで意欲を示している。
日本からサウジアラビアの航空路線は、06年にサウジアラビア航空が大阪からマニラ経由で運航していたことがあるが、1カ月も立たずに運休に追い込まれた。当時は前述の改革前で、日本側も成田空港への発着は認めていない状況だった。
19年に観光ビザが解禁されると、23年には旅行ガイドブックの「ことりっぷ」(昭文社)にサウジアラビア版が登場するなど、日本人の同国への観光需要が高まりつつある。そして何より、サルマン皇太子は日本のアニメや漫画好きで親日家として知られ、サウジアラビア側から日本に直行便を出したい意向が大きい。
サウジアラビア政府観光局は、24年9月に東京で開催されたツーリズムEXPOジャパンにて大規模なブースを展示し、公式ホームページには日本語版も用意するなど明らかに日本を意識した展開を進めている。
日本人旅客からすると、この路線が実現すれば欧州やアフリカ、南米への乗り継ぎの選択肢が増える。最も注目したいトピックの一つである。
2位ベオグラード(セルビア)
シベリア上空の通過が可能か
2位は欧州セルビアの首都・ベオグラードだ。セルビアというと、2000年代まで続いたユーゴスラビア内戦のイメージが強く、あまり良い印象を持たない人が多いかもしれない。
しかし近年は政情が安定したこと、古代の遺跡や中世の街並みなど観光スポットが充実していること、また意外にもクラブ(ディスコ)が盛んでナイトライフ(夜遊び)も注目されていることなどから観光客が増えている。
24年10月開催の「日本・セルビアビジネスフォーラム」では、セルビア大統領が「国営航空会社のエア・セルビアが6カ月以内にベオグラード~東京の直行便就航を目指す」と発言。実際、エア・セルビアは中国や米国などへの直行便を次々と開設している。
ウクライナ戦争が長引く中、セルビアはロシアへの経済制裁に参加していないため、他の航空会社では不可能になったシベリア上空を通過できるのが最大の特徴だ。
ただし、24年12月にアゼルバイジャン航空の墜落事故が起きたことから、シベリア上空通過の実現可能性が不透明となった。なお、中欧・東欧では他にクロアチアやチェコなどが日本発着便の開設を検討している。今はLOTポーランド航空による成田~ワルシャワ線のみだが、これから増えていくことに期待したい。
3位マイアミ(米国フロリダ州)
JAL&アメリカンに期待
3位は、米国フロリダ州のマイアミだ。温暖なリゾート地で、都市圏人口は約600万人、ハリウッドスターを含め富裕層も多く居住している。イチロー選手がメジャー3000安打を達成した際に所属していたマイアミ・マーリンズの本拠地としても知る人も多いだろう。マーリンズのスタジアムは23年のWBC決勝の会場で、「侍ジャパン」が世界一に輝いた場所でもある。
土地柄、キューバ系など中南米からの移民が多いのも特徴で、マイアミ国際空港には100以上のエアラインが乗り入れ、1日400便以上が発着している。主力会社の一つ、アメリカン航空も多くの路線を運航しているが、アジア便がないのが課題で誘致が進められている。
とりわけアメリカン航空が加盟する航空連合・ワンワールドのメンバーである日本航空への期待は強く、「JALの次の新しい就航地はどこか?」といった話題が出るたびに候補となる場所だ。
JALは1月21日、25年の運航計画の中で、5月31日から成田~シカゴ線を開設すると発表した。共同事業パートナーであるアメリカン航空とのコードシェア便だ。ただし、シカゴ線は昔あった路線の再開なので新鮮味はなく正直、無難というのが筆者の感想だ。
マイアミ線開設について慎重な姿勢を崩していない理由の一因に、距離の問題があるだろう。東京~マイアミは約1万2000km離れていて、これはJALの最長距離路線であるニューヨーク線はもとより、日本の航空会社で最長となるANAの成田~メキシコシティ線(1万1247km)よりも長い。ロングフライトは燃料費や人件費などのコスト負担が大きい。
また、中南米への乗り継ぎ拠点の意味では、アメリカン航空の最大拠点でありJALも就航済みのダラスと被ってしまうことも挙げられる。
とはいえマイアミからはインバウンドの富裕層の利用が期待できるうえ、日本人旅客に関しても直行便ができればカリブ海地域を含めた観光需要もそれなりにあると思われる。また、
JALは25年の運航計画を発表したものの、国際線の下期路線便数計画については再考の余地がある。航空ファンからすると、ANAを上回る最長路線の誕生は、リスクを取ってチャレンジする姿勢を問う路線とも考えられる。
JALはパイロットの飲酒不祥事が度々取り沙汰されるなど、オペレーションやリソースの問題も指摘されており、運航に余裕があるのかが焦点になるだろう。ただし、ANAに比べるとあまりにもネットワークが不足している以上、路線を拡充してほしいものだ。
本稿は筆者独自の見解を含んでいる。航空ファンや旅行好きが意見交換する参考になれば幸いだ。トップ9完全版では、3大航空連合の動向比較やLCCの戦略も織り交ぜながら、4位から9位を一挙に紹介しているので是非チェックしてほしい。