ニートは若者特有の現象ではなく
男女の割合に大きな違いもない
「労働力調査」は同一個人を追跡したパネルデータではないので、卒業後すぐにニートになった人が何年もずっとニートのままなのか、それとも一部はニートから脱するものの、同じくらいの人数が新たにニートになるために、全体としての割合が減っていかないのかはわからない。しかしとにかく、ニートは若者特有の現象ではなく、年齢を重ねても自然に減ってはいかないことは確かだ。
高校卒の男性の場合、卒業後11~15年目、すなわち30歳前後になっても、約4%がニート状態にある。男女を比べると女性のほうがニートの割合が少ないが、主な活動として家事をあげている、いわゆる「家事手伝い」を足すと女性のほうが多くなる。女性のほうが家事手伝いを自称しやすいことを考えると、実質的には男女で大きな違いはないと見てよいだろう。
短大卒以上の学歴について同様にしてグラフを作ったのが、図4-4の下段だ。人口に占めるニートの割合は高校卒の4分の1くらいにまで減るが、若い世代ほどニートの割合が高くなり、年齢を重ねてもニートが減っていくわけではない点は変わらない。家事手伝いを含まない定義だと女性が少ないが、家事手伝いを加えると女性のほうが多くなる点も同じである。
充分なサンプルサイズが確保できる高校卒については、学校卒業年1年単位での集計も試した。グラフそのものは割愛するが、氷河期後期世代までは、学校卒業時の失業率が上がるにつれてニートの割合も増えていく傾向が見られたが、学校卒業時の失業率が下がっていたポスト氷河期世代でもニートの比率は下がっていなかった。年収や正規雇用比率などについても、ポスト氷河期世代と氷河期世代の差があまりなかったが、ニートの割合についても同じであった。しかも就業率や正規雇用比率と異なり、年齢が上がっても氷河期以降の世代とそれより上の世代の間の差は縮小しない。
若い世代ほどニートは増加傾向
いずれ高齢ニートが深刻な社会問題に
ちなみに、若い世代ほど高校卒の割合が小さくなる。このことは、人口全体に占めるニートの割合を下げる方向に寄与するが、同じ学歴の中でのニート割合の増加のほうが大きいため、学歴で区切らない人口全体に占めるニート割合は若い世代ほど大きくなっている。