「一生活躍し続ける人たちには、ある共通点がありました」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さん。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援もおこなっています。
その金間さんの新作が『ライバルはいるか?』です。社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べ、「誰かと競う」ことが人生にもたらす影響を解き明かしました。挑戦する勇気を得られる内容に、「これは名著だ!」「人生のモヤモヤが晴れた!」との声が多数寄せられています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して、「活躍し続ける人たちの共通点」を紹介します。

「一生活躍し続ける人」の意外な共通点。彼らはいったい“何”と戦っているのか?Photo: Adobe Stock

活躍し続ける人たちは、何と戦っているのか?

 本研究のルールで名前を明かすことはしていないが、インタビュー対象者の中には著名人も何名か含まれている。

 彼らは自らの世界で高い実績をおさめ、多くの関係者から尊敬される立場にある。そんな彼らにインタビューできたのは本当に幸いだった。

 僕から彼らへ問うたのは、本章のテーマそのもの。
「勝者にはもうライバルはいないのか」だった。

 ここで結論を示そう。
 彼らから発せられたキーワード、それは「自分」であった。

 高い実績を収めたインタビューの回答者たちは、こう僕に答える。

「ライバル? 強いて言うなら『自分』でしょうか」

「一日の終わりに、『あー、今日は自分に負けたな』って思う日は結構あります」

「このままではこれまでの自分を更新できない。先へ進んでない。そう思うと、自分が嫌になりますね」

 過去の自分に勝つ。
 ライバルは自分自身。

 この「ライバルは自分」という状況、一体どんな感覚なのだろうか?

第4のライバル「ゴースト」とは

 本書では、先行研究を踏まえ、ライバルの型として「好敵手」「基準」「目標」の3つを提示した。
 そこに僕が足した、第4のライバルの型。
 僕はそれを「ゴースト」と命名する。

 このライバルに実体はない。
 にもかかわらず、強い存在感をもって自分を追い立てる。ときに誹謗し、ときに中傷しながら、あなたを追い込む。その実体のなさは、まさに亡霊のよう。

 この亡霊は、あなたを褒めることはない。
 あなたにできることは、この亡霊を黙らせることだけ。ゴーストの沈黙だけが、あなたの勝利を意味する。

 だが、そんな晴れやかな日はそうそう来ない。
 来る日も来る日も、ゴーストは「いいのか、その程度で」と語りかけてくる。

 このゴーストの正体は、「過去の自分」だ。

364日は「過去の自分」の勝ち

 かくいう僕もゴーストを抱えている1人だ。
「今日も勝てなかったか」と、一日の終わりに思う。

 ライバルはまさに「過去」の自分。これまでのすべてを積み上げてきた自分自身だ。この敵は本当に手強い。

 朝起きて、「今日はこれをここまでやろう」と決める。
 その理想は特別高いものじゃない。ちゃんと集中すれば、自分ならできる範疇にあるものだ。

 でも、ほとんどの日において、その目標は達成されない。
 ちゃんと数えたことはないが、おそらく勝率は365分の1程度。もうほぼ負けしかない。負けまくりのマイライフ。

 何が悪いかは明白だ。
 自分自身の弱さ。それに尽きる。
 決して外的な環境のせいではない。自分が弱いから負ける。

「過去の自分」と戦い続ける

 とくに手強いのはクリエイティブ系の仕事だ。
 僕の場合は、論文や書籍の執筆、新しい研究計画の作成などが該当する。

 世にないものを生み出すのは本当にしんどい。
「量」は問題にはならない。すべては「質」に集約される。すべては過去の自分が生み出したクオリティを超えられるかどうかにある。

 過去の自分だって、サボっていたわけじゃない。
 その過去の自分がゴーストとなって、今の自分の前に立ちはだかる。

 そんなものか?
 もう終わりか?

 そう語りかけてくる。

 文字通りの身を削る感覚がそこにはある。
 強い孤独感との戦いになる。
 その感覚は年々強くなっている。
 それでも今日も「自分自身に合格点を出す」ことを目指して、一日をスタートする。

(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)