「映画業界において現場責任者が講じるべきハラスメント防止措置ガイドライン草案」や、あるいは、「表現の現場調査団」では学生向けのリーフレットを発行している。また、「日本芸能従事者協会」ではハラスメント研修を出張し、実施していることも付記しておく。
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オーディションの機会が増えても
加害行為はゼロにはならない
(2)映画監督、演出家の講師への偏重をやめること。
これはぜひ俳優ワークショップを主催する運営団体の皆様にお願いしていきたいことで、俳優の教育は演技の専門家である俳優やアクティングコーチをまず講師の候補に挙げてほしい。そうすることで、ワークショップをキャスティングの期待感から一旦切り離し権力勾配につけ込んだ加害行為を抑止できるうえに、より実践的、具体的な授業内容が期待できるようになる。
世の中にはオーディションを兼ねたワークショップもたしかに存在し、そういったものを完全には否定しないが(ただし、それらが有料で行われるのは問題である)、最悪なのはオーディションでもないはずの場で「気に入られればキャスティングされるかも」という空気感を運営や監督、プロデューサーが意図的に醸し出すことである。
(3)業界全体でオーディションの機会を増やしていく。
これについては最も長期的な目標になるが、そもそもワークショップにキャスティングへの期待感が集まってしまうのは、それだけキャスティングのチャンスが俳優たちに開かれていないからである。本来、監督やプロデューサーと俳優が出会うための正攻法は、オーディションであるべきだ。俳優はここで自分の演技や個性を披露し、監督やプロデューサーは彼や彼女が役にマッチしているかを判断する。
より公正でシンプルな出会いの場としてのオーディションが映像映画業界に普及していけば、ワークショップをより純粋な演技の研鑽の場として開放できるはずだ。そのために、オーディションを積極的に行う座組に対しその負担を補填する助成金などがあってもいいとさえ個人的には思っている。