
多くのジムニーファンが待ちに待った、5ドア「ジムニー」が4月3日から国内販売される。登録車3ドアの「ジムニーシエラ」を5ドア化し、「ジムニー ノマド」と名付けた。インドで製造し、日本に輸入する。ところが予約販売で注文が5万台超となり急遽、注文は一時停止に……。将来の電動化を含めて、ジムニーの未来について考えた。(ジャーナリスト 桃田健史)
社長の「不安」が現実になってしまった
「私は、(当初)反対だった」
スズキの鈴木俊宏社長は2025年1月30日に都内で開催された「ジムニー ノマド」の発表記者会見で、このタイミングでの日本導入に当初は積極的ではなかったことを明らかにした。
なぜならば、既存の2モデルである、軽自動車「ジムニー」と3ドア登録車の「ジムニー シエラ」が国内で多くの受注残を抱えている状態だからだ。
これら2モデルは、静岡県の湖西工場で18年の予約販売時点でオーダーが殺到し、納期は1~2年、いやグレードによってはさらに時間がかかるといった「長納期」が定常化していた。工場内の改良による生産能力の拡大を進めて、納期はやや短くなったものの、発売から6年半を経た現在でも、ジムニーやジムニー シエラには長納期というイメージがついているのが実状だ。
そうした状況で、鈴木社長としては「いまお待ちいただいているお客様のお気持ちが第一」というのが基本姿勢だったというわけだ。
だが、ジムニー5ドアは23年1月にインドで世界初公開され、その後に世界各国で販売が開始されており「いったい、日本にはいつ導入するんだ?」と国内のユーザー、販売店、そしてアフターマーケット業界からの声が高まっていたのも事実である。
会見で、国内営業担当者は「ジムニーやジムニー シエラをお待ちのお客様のご要望を丁寧にお聞きした上で、ジムニー ノマドへの受注切り替え(納品する車種を替えること)をご検討いただく場合もあり得る」という打開策を示した。
こうした「お客さま一人ひとりに寄り添って説明していく」という国内営業の意向を、鈴木社長が最終的に認めたという経緯がある。
ところが、蓋を開けてみると、今後はジムニー ノマドに注文が殺到。月間販売計画台数の1200台を大きく超える5万台の受注となり、会見の4日後、スズキは「ご注文停止のお詫び」を発表。単純計算で、初期受注分をさばくには4年近くかかってしまう状況だ。