萩本欽一萩本欽一 Photo:SANKEI

今年で83歳となる、日本を代表するコメディアン・萩本欽一。1979年に始まった長寿番組『欽ちゃんの仮装大賞』シリーズは今年で100回目を迎え、話題となった。数々の人気番組を生み出し、どれも高視聴率を叩き出したことで「視聴率100%男」と呼ばれた欽ちゃんと、当時70%を超える圧倒的な視聴率を誇っていた『紅白歌合戦』の知られざる戦いとは。※本稿は、太田省一『萩本欽一 昭和をつくった男』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

視聴率調査をしながら番組を進行
型破りな企画で紅白と視聴率合戦

 実はこの『仮装大賞』、最初は『NHK紅白歌合戦』の裏番組だった。当時、70%を超える圧倒的な視聴率を誇っていた『紅白』に対抗する存在として、当代随一の人気者となった萩本欽一は頼りにされる存在だった。

 そういうわけで『仮装大賞』以前の数年間も、齋藤太朗(編集部注/『仮装大賞』の企画・演出を担当)と組んだ萩本は、『紅白』の裏番組をやっている。『コント55号の紅白歌合戦をぶっ飛ばせ!なんてことするの!?』というコント番組だったが、そのなかに萩本らしい思い切った試みもあった。

 それは、自前の視聴率調査。生放送中に一般家庭に電話をかけ、いまどの番組を見ているかを聞く。そしてその結果を集計して放送中にグラフで見せるのである。それをネタにして、欽ちゃんや二郎さんが一喜一憂しながら盛り上げるというわけである。

 いうまでもなく視聴率は、萩本欽一というタレントの命運を左右するものだ。土曜8時のドリフとの戦い、そしてこの『紅白』との戦いからわかるように、視聴率は必死で勝ち取らなければならない戦利品である。負ければ自分の番組がなくなり、仕事が激減する。だから視聴率にはとにかくこだわり抜き、そのための創意工夫に手を抜くことはない。

 しかし萩本はコメディアン。その創意工夫はすべて笑いのためのものである。だから笑いになるならなんでも利用する。時には、肝心の視聴率そのものでさえも遊びの材料になる。『紅白歌合戦をぶっ飛ばせ!』の視聴率調査は、まさにそれを地で行くものだった。

 視聴率に真剣にこだわり抜くと同時に視聴率のために徹底して遊ぶ。この両者が噛み合ったことで、欽ちゃんの番組は快進撃を続けた。

「これじゃ、CMに申し訳ないな」
コントからバンドネタに変えて人気に

『欽ドン!良い子・悪い子・普通の子』も、『欽どこ』と同様最高視聴率38.8%と視聴率30%超を記録。さらに1982年にスタートしたTBS『欽ちゃんの週刊欽曜日』も同じく最高視聴率31.1%を記録するに至り、欽ちゃん番組はことごとくトップクラスの高視聴率番組となった。