ビートたけしPhoto:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

常に思考を続ける人とそうでない人とでは、思考力に歴然とした差が出る。それが顕著になるのが中高年になってからだろう。思考力を高める習慣を齋藤孝氏が説く。※本稿は、齋藤孝著『最強の60歳指南書』(祥伝社新書)を一部抜粋・編集したものです。

「考えごと」と
「思考」の違い

「思考」し続ける意味について、少し見方を変えて考えてみたいと思います。

 思考は「考えごと」とは違います。考えごととはぼーっとしている状態のことで、ここでは思考の重要性について触れておきましょう。

 思考とは、たとえば「どうしたらこの商品が今より売れるのか」を具体的に考えることです。「明日、企画会議だなぁ」とぼんやり思っている状態が考えごとなら、「どんな企画を提案しようか」と答えを求めて頭を働かせている状態が思考です。

 結局のところ、この思考の差こそがほかの60歳との差にもつながります。できる人というのは常に考えている人のことなのです。

 成功しているアスリートは、先天的な才能だけでプレーをしているわけではありません。「どんなトレーニングをどのくらい行なえば、どの程度の向上がいつ頃までに見込めるか」ということを、データやエビデンスをもとに思考し続けているのです。

 まさに寝ても覚めても考えを止めないこのような状態を、私はいい意味で「思考中毒」と名づけたことがあります。

 解剖学者の養老孟司さんは、著書『「他人」の壁』(名越康文さんとの共著、SBクリエイティブ)の中で、「違和感」を持ち続けることの大切さについて述べています。「なぜだろう」と思ったらそれを心にとどめておく、違和感をなくした途端に思考も止まるというのです。

「なぜだろう」という気持ちを抱えておけば、それがある日、ふとしたきっかけで予期せぬ答えとして出てくるときがある、それが学者としての達成感であるともおっしゃっています。そういう意味では、学者は「思考中毒」の典型といえそうです。

 思考のポイントは、「違和感センサー」を働かせること。このセンサーが反応すれば、思考のスイッチが入ります。

 40代、50代までに思考中毒の習慣を身につけ、来るべき60歳を目指したいものです。

ビートたけしさんも番組で多用
「あえてカオスなことを言う」

「カオス」とは「混沌」「無秩序」を意味することから、言葉そのものにいい印象を持たない人は多いかもしれません。ところが、独創的で豊かなアイデアというのは、じつはこのカオス抜きには語れないという一面もあるのです。