「昇進のチャンスがない働きアリ」アジア系アメリカ人の自己嫌悪はいつまで続くのか?写真はイメージです Photo:123RF

アフリカ系アメリカ人やヒスパニックについての書物は数多くあれど、アジア系アメリカ人を取り上げたものはとても少ない。アジア系移民の子どもであり、「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたキャシー・パーク・ホンが描いたアジア系アメリカ人の「マイナーな」感情。今回は彼らが抱く自己嫌悪とその原因を、自身と父親の体験を例に紐解いていく。※本稿は、キャシー・パーク・ホン(著)、池田年穂(訳)『マイナーな感情 アジア系アメリカ人のアイデンティティ』(慶應義塾大学出版会)の一部を抜粋・編集したものです。

多くは語られてこなかった
アジア系アメリカ人の自己嫌悪

 一般大衆の想像力のなかで、アジア系アメリカ人はいわば煉獄のようなところに位置している。肌の色は白でもなければ黒でもない。アフリカ系アメリカ人からは不信の目で見られるし、黒人を押さえつけておくために白人に利用されるのでもなければ、白人からは無視される。

 私たちはサービス業界の働きアリ、実業界の党官僚(アパラチック)だ。私たちは計算の得意な中間管理職で、企業の歯車が円滑に動くよう尽力するが、指導者にふさわしい「顔」をしていないので昇進の機会は与えられない。

 私たちにはコンテンツの問題がある。白人たちは、私たちには潜在能力がない、と考えている。だが、無感覚に見えても、私は必死に水の中で足を動かし、ひどい劣等感を隠そうと過剰補償(オーバーコンパンセーション)をしているのだ。

 自己嫌悪に陥ったユダヤ人やアフリカ系アメリカ人を扱った文学はやまほどある。だが自己嫌悪を覚えるアジア系アメリカ人については多くは語られていない。人種上の自己嫌悪というのは、白人が見る目で自分を見ることを意味するが、そうすることで、あなたは自分の最悪の敵になる。

 唯一の防御法は自分自身に厳しくあることだが、それはやがて強迫観念となり――よって心地よくもなるのだが――死に至るまで自分を責めることになる。あなたは自分の容姿もしゃべり方も好きになれない。

 アジア系の自分の顔がはっきりしていないと思い、神があなたの容姿を作り始めたのに途中で放り出したみたいだ、と感じてしまう。あなたは、部屋の中にアジア人がたくさんいるのが気にくわない。

 このアジア人たちを入れたのは誰なの?あなたは心の中で怒鳴りまくる。団結というわけにはゆかない。あなた自身の境界がもはやはっきりせずアジア人という大群の中にしっかりと組み込まれてしまうので、まわりのアジア人より自分は見劣りすると感じてしまう。