「35歳以降で、衰える人と活躍し続ける人を分ける違いがあります」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さん。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援もおこなっています。
その金間さんの新作が『ライバルはいるか?』です。社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べ、「誰かと競う」ことが人生にもたらす影響を解き明かしました。挑戦する勇気を得られる内容に、「これは名著だ!」「人生のモヤモヤが晴れた!」との声が多数寄せられています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して、「活躍し続けられる人の特徴」を紹介します。
![35歳以降で「衰える人」と「活躍し続ける人」の、たった1つの違い](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/d/4/1300/img_d4f12d63f8746de87be12b358f5fb02c203141.jpg)
35歳以降の人は、20代に勝てない
僕はかつて、年齢と人の能力に関する論文をいくつか書いたことから、関連する先行研究を読み漁ったことがある。その知見から、本書をお読みの35歳以上の人に対し、良いニュースと悪いニュースをお届けしたい。
どちらから始めてもいいが、好きなものを最後に取っておく派の僕としては、まず悪いニュースからいってみよう。
大変残念なことに、基本的な能力、たとえば計算力や情報処理能力、マルチタスク処理能力などは、20代の早い時期をピークにどんどんと低下していく。
さらに記憶のアップデートや注意力を測定する検査でも、35歳以上のスコアは20代に比べて低くなる。とくに記憶力に関しては、新しい記憶の書き込み、古い記憶の呼び出しともに若い人の方が優れている。
ついでに言ってしまうと、それらの他にも、知覚速度、空間認識、推論、エピソード記憶などに関する能力も加齢とともに低下する。
もはや脳の基礎スペックのすべてが低下すると言っても過言ではない。これに加え、当然体力的な衰えも重なる。とにかく、いろんなものがどんどん下がる。
衰える自分を「過去の自分」が追い立ててくる
そんな中、「過去の自分」が語りかけてくる。
おいおい、そんなものか。
そこで終わりか。
もう余生か。
まさにゴースト。無慈悲極まりない。
あなたにとって、史上最強のライバルとなる。
実際、ゴーストはあまりに強いので、普通は抗うことすらできない。抗う想像すらしない。心を折られることが目に見えている。
成長し続ける「レジェンド」と呼ばれる人たち
それでも、世の中には進化を止めない人たちがいる。「レジェンド」と呼称される人たちだ。
彼らは自らが属する業界で、自身の記録を更新し続ける。まさに生きる伝説だ。
なぜ「レジェンド」たちは、そんな芸当ができるのだろうか。彼らだけが知っている、何か特別な秘策でもあるのだろうか。
なぜ、彼らだけが過去の自分に勝てるのか。
ここで、良いニュースの登場だ。
一社会人の比較として、若い人の方が明らかに多くのデータを分析し、多くの顧客を訪問し、多くの残業をしているのに、そんな若手の数段上の成果を上げるベテランがいる。年配者は若手に比べて緩やかなペースを保っているにもかかわらず、複数のタスクを処理することがある。
このような観測結果の根拠となるのが、経験の蓄積とその有効活用である。
人は蓄積した経験を、個人の中で知識や技能に昇華することによって、加齢による様々な能力の低下を補い、場合によってはそれらをはるかに上回る強みとして機能させることができるという。学術的な研究でも、それが裏付けられている(Salthouse.2012; Kanfer and Ackerman .2004)。