「過去の自分」に勝つたった1つの方法

 これらの先行研究では、このことを経験知の結晶化と呼ぶ。
 単なる計算力や記憶力は20歳過ぎをピークとして、以降は徐々に低下し、人によっては低下速度が加速していく。その一方で、結晶化された能力は、トレーニングによっては60歳前後まで伸び続ける。

 こうして経験を価値ある結晶に変えることができるのは、自らの「コンフォートゾーン」を超えたところで勝負してきた人だ。

 ここで言う「コンフォートゾーン」とは、自らの能力やスキルで十分こなせる範疇のタスクのことを指す。その名の通り、不快な思いをすることなく処理することができる領域だ。

 他方、「コンフォートゾーン」を超えた戦いは厳しい。
 自分にとって未知の領域でのバトルとなる。
 勝てるかもしれないし、負けるかもしれない。

 そんな限界ギリギリの勝負を繰り返してきた人こそが、己の限界を超え、進化を遂げる。
 そんな人たちのみが見える景色がある。

あなたは最近、「自己ベスト」を更新したか

「自己ベストを出す」

「日々の目標は何ですか」という僕の問いに対し、インタビュー回答者の1人が、そう語ってくれた。
 とても共感した。僕もよく使う言葉だ。

 本章も締めくくりに入る。
 ライバルは、あなたの人生を豊かにしてくれる。そして、一番身近で、すべての人が見つけることのできるライバルがいる。

 それが「自分」だ。

 自己ベストを、更新しよう。
 昨日までの自分を更新しよう。

 そして自己ベストを出すために、まずはそのプロセスでベストを尽くそう。目標としての「自己ベスト」。そのための「プロセス・ベスト」だ。

 言うまでもなく、そのプロセスは苦しく、険しい。過去の自分が手を抜いていないなら、なおさらだ。ベストを尽くした自分を追い抜こうというのだから。

 苦しいのなら、もうやめにしようか?

 やめたければ、やめればいい。
 やめることはいつでもできる。

 でも、負けたくない。
 ここで終わりにしたくない。

 そんな心の声が聞こえたのなら、それはあなたの中にも「ゴースト」が宿っている証拠だ。
 そして、あなたがまだまだ成長できる証拠でもある。

(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)