ホームページをひらけば「反緊縮」を軸に「反TPP」といった反グローバリズム的、リベラルな人権擁護を目指した政策が並ぶ。これらは、欧州各国の選挙で同じように「台風の目」と目された典型的な左派ポピュリズムの主張の日本版である。加えて、山本自身が体現するのは永田町エリートが独占する既得権益への挑戦という「物語」だ。彼は「選挙は面白くないといけない」と連呼する。いかに選挙戦を楽しませるかが、彼の気を配るところなのだ……。
山本太郎が反原発運動から
経済政策へ主軸を変えた理由
インタビュー(「ニューズウィーク日本版」2019年11月5日号)のなかで山本はいくつか興味深いことを語っていた。過去にあれだけこだわっていた反原発運動から「お金」に主張の軸を変えたことについて――。
「人々の関心という点で考えるなら、目の前の生活がやはり大事になります。人に政治の話を聞いてもらおうというときに、原発や被曝だとどうしても入り口が狭くなりますよね。原発問題に関心を持ってもらうためにも、最初は入り口を広げておくんです。扉を最大限に広げていくためには、経済政策が大事ですよ。例えば、原発問題でもお金に絡んだ話をしたときは、足の止まり方が全然違ったんです。街頭で語っていても、経済政策を語ったときのほうが反応してくれる」
とりわけ面白かったのは、私が「自分の政治的スタンスをどう捉えているのか」と聞いたときのことだ。彼は非常に印象的な「フリースタイル」という言葉を用いて熱を帯びた口調で説明を始めた。
「右派か、左派かなんていうのは、私にとっては重要ではない。それは人をカテゴライズするのに便利で万能なのかもしれないが、はっきり言ってどちらにも興味がない。私は右派でも左派でもなく、フリースタイル」
「主義」ではなく
「スタイル」にこだわる
この発言は、山本太郎というポピュリズム政治家を象徴しているように思えた。中心にあるのは、強固かつ体系的なイデオロギーではなく、あくまで「スタイル」という言葉に集約されるものだ。理論よりも戦い方にこだわりを見せる。これが既存の左派勢力との違いだ。インテリの「あなたの立場は~~主義なのに政策が矛盾しているではないか」といった論法は彼には無効化する。そもそも体系的な「主義」がないからだ。