高市政権“強い国”実現で日本が持つべき4つの「地経学的パワー」、国際秩序の新時代に国益を確保する方法10月28日、日米首脳会談を行った高市早苗首相とドナルド・トランプ米大統領 Photo:Andrew Harnik/gettyimages

高市首相、外交・安保で早くも試金石
「トランプ訪日」、APEC首脳会談

 国会における首班指名選挙で10月21日、高市早苗自民党総裁が初の女性総理大臣として選出された。しかし、高市首相は、日本維新の会との連立によって首班指名を勝ち取ったとはいえ、与党は過半数には届かない議席しか持っておらず、政権運営が厳しい中での船出となる。

 まずは、10月31日、11月1日に予定されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議やその前に来日するトランプ米大統領との首脳会談など、外交、安全保障での重要な会合が待ち受ける。

 国際情勢は、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻、トランプ関税に象徴されるように従来のルールに基づく国際秩序が、大国の力による国際秩序作りへとシフトしている。

 APEC首脳会議では、中国の海洋進出に対する歯止めやトランプ相互関税からの影響を軽減するためにも、ミドルパワーの連携が不可欠となる。

 さらに、アメリカとの間では、関税と投資の合意はできているが、それでもアメリカへの輸出には15%の相互関税に加え、鉄鋼・アルミや自動車・自動車部品などの特定品目に関しては、それ以前よりもはるかに高い関税を課されている。

 また、米中の貿易摩擦の中で、中国が対抗措置として打ち出しているレアアースや重要鉱物に関する輸出規制は日本のさまざまな産業に影響を与えている。

 一方で、関税見直し交渉で合意した日本の「対米5500億ドル(約81兆円)投資」については、具体的な投資分野や「1対9」とされる日米の投資リターンの配分などで日本にとって不利な条件もあり、アメリカが再度関税を上げる余地も残されている。

 こうした問題が山積する中で、高市新政権がいかに日本の国益を確保できるかだ。

 重要なのは、現代の国際秩序を規定する力(パワー)は、これまでの伝統的な軍事力や外交力、経済力といった「国力」だけに由来するものではなくなっていることだ。現代におけるパワーは、一言でいえば「地経学的パワー」によって定められている。

「強い国、強い経済」実現をキャッチフレーズに掲げる高市新政権だが、そのためにはまずは四つの地経学的パワーを持つことだ。