デジタル分野への転換
外部と連携する戦略

 かつての総合電機メーカーのように、今も多岐にわたる事業を展開し続け、特定の強みに特化しきれていない企業は成果を上げにくい状況にある。自社の「環境」と「資源」を的確に把握できているか否かが、業績の明暗を分ける要因となっているのかもしれない。

 ここでいう「環境」とは、市場と置き換えることもできる。日本企業は、IT分野ではもはやアメリカに太刀打ちできず、ものづくりでは中国に及ばない。しかし、ITとものづくりを組み合わせた市場には競争相手がまだ少ない。

「この市場を適切に見極め、戦略を立てられるかどうかが、成功のかぎを握っている」(長内氏)

 日立の業績が伸びるきっかけとなったのは、「Lumada(ルマーダ)」というITプラットフォームの構築である。Lumadaは、日立のデジタル戦略の中核を担い、制御機器や社会インフラなどのさまざまな事業と結びつく形で展開されている。

 これは単に技術的な接続を指すのではなく、より広義な意味での統合を含んでいる。日立のホームページにも具体的な事例が紹介されており、ITとものづくりの融合によって事業を成功させている。

 一方、ソニーグループのエンターテインメント分野の主力はゲーム、映画、音楽で、近年はアニメも重要な柱となりつつある。これらのエンターテインメントの価値を最大限に引き出すために、テクノロジーを活用するという方針が同社の特徴である。

 2000年代までは売り上げの6~7割をエレクトロニクスが占めていたが、現在ではエンターテインメントが約7割を占める企業へと転換している。

 この業態変化に対して、「ソニーらしさが失われた」との批判も一部で見られるが、同社は変化を恐れず、果敢に対応してきた。その姿勢こそが、現在のソニーグループの強みであり、高い評価につながっている。

 今、電機業界では、異業種との提携を積極的に進めており、従来のものづくり企業とは異なる領域の企業と協業するケースも増えている。