専門性を高めつつ
視野を広げる「両利きの力」
電機業界の企業に新卒で入社する場合、各事業会社の専門性に応じた部署、例えば半導体の知識を持っていれば、半導体事業の部署に配属されることになる。
このようなジョブマーケットにおいて競争力があるのは、同じ半導体の知識を持っている場合でも、単に半導体の専門知識に特化した人ではなく、その知識を様々な分野に応用できるビジネスのセンスを持った人だ。
企業の採用がジョブ型に近づくことで、専門特化しているように見えても、実際には業界で生き残るためには、専門性とビジネスを統合するスキルを持っていないと難しいだろう。
電機業界に就職したい場合、どのような準備をしておくと有利になるか。「自分の専門性をしっかり持つこと」と、「横幅を広げること」を同時に進めることが重要である。
専門性だけではキャリアアップできないが、専門性を持っていなければ競争力そのものがないため、大学での専門をしっかり学びながら、同時にさまざまな経験を積み、いろいろな世界に触れることが必要だ。
専門性を高める第一歩は、大学でしっかり勉強することだ。「3年生になると、就職活動にシフトして大学の勉強をしなくなる人も多い。しかし、最終的に強いのは、大学での勉強と就活を両立できている人である。したがって、大学でしっかり学んでいないと評価されにくくなってしまう」と長内氏は話す。
ジョブ型採用に移行する中で、従来のように白紙の状態から教育するのではなく、即戦力に近い人材が求められる方向に変わってきている。そのため、学生時代に何も勉強していなかったでは通用しない。
横幅を広げるというのも同様で、視野を広げるためには、さまざまなことに興味を持つことが大切だ。
これは一見、専門性を高める、一つのことに集中することと相反するように見える。しかし、専門性を高めることと横幅を広げることを同時に実行できる力が求められている。経営学的に言えば、それは「両利きの力」と呼ばれる。