ところがこの大事なインターバルに、ストレスや疲労がたまるDHとして毎日出場したらどうなるか。投手としての心身の調整や練習が犠牲になるだけでなく、打ったり走ったりする野手としてのリスクも待ち構えている。

 日本より厳しいアメリカのメディアもほめあげるように、大谷は体が大きいうえに投げて打って足も速い。だが人間の体と能力は歳とともに衰えて無理がきかなくなる。

 まして過去にも利き腕に大きな手術をし、屈筋回内筋群などの損傷、左ひざの手術など大小のケガが続いている。そして右ヒジ靱帯損傷後の2023年9月、オリオールズ戦でも試合前に屋外でのフリー打撃の途中で右脇腹を痛め、「2番・DH」の出場予定だった試合を欠場した。

 この日、大谷の代理人は「右ヒジの靱帯は断裂していない。手術するかどうかは複数のセカンドオピニオンを受けて検討中だが、来季はどこかのチームでDHとしてプレーする」と語ったが、当時私は「このあともし2度目のトミー・ジョン手術を受けるようなことになれば、いくら大谷でも投手生命、つまり二刀流ができるのはあと3年くらいだろう」と語り、コラムにも書いた。

三冠王どころか盗塁王も狙える大谷
二刀流を続ける必要はなかろう

 その悪夢は同年9月20日に現実のものとなった。大谷と球団が「右ヒジの手術を行い、成功した」と公表したのだ。

 報道によると、手術したのは前回2018年にトミー・ジョン手術をしたニール・エラトロッシュ医師。大谷の代理人・ネズ・バレロ氏は「ヒジが長持ちするよう生体組織を移植した」と言っており、人工靱帯で補強した「ハイブリッド方式」ではないかと見られている。断裂した靱帯は前回とは別の場所で、トミー・ジョン手術とは違う術式だという。

 前回とは違う場所で術式が違うというが、ヒジ関節を挟んで前回は上、今回は下で、同じヒジの再手術には違いあるまい。担当医は「2024年シーズンは開幕から打者で出場し、2025年は両方(投打)の準備が整う」と見ているが、同じヒジの再手術は前回以上にリスクが高く、これまでのような球威が復活する保証はない。