私はこの際、投打どちらにしろ、一方に絞って再起を目指したほうがベターだと思う。
2024年、夢のリーグ優勝とワールドシリーズを目指して(編集部注/原稿執筆当時。のちにワールドシリーズ制覇を達成)ドジャースに移籍した大谷は打者に専念し、打って、走った。1番・指名打者として54本塁打、130打点、打率.310、そして盗塁も59。打率はパドレスのルイス・アラエスの.314に及ばず2位に終わり、4厘差で初の三冠王を逃したが、ナショナル・リーグの二冠王で59盗塁は立派なものだ。
繰り返しになるが、大谷のバッティングで一番優れているのは、引っ張るだけでなくセンターにもレフトにも球に逆らわず打てることだ。
2024年のホームランの打球方向はライトが最も多く、27本(50%)。次いでセンター方向が21本(39%)で、レフト方向も6本(11%)あった。センター方向のホームランがライト方向と同じくらい多いのだ。
この打球方向からも落合の打法に通じるものを感じるが、三冠王に手がかかりそうな大谷を見ると、もう投打の二刀流を続ける必要はないのではないか。
大リーグの野球も
質が落ちたなと思う
また、今シーズンの成績は、ヒジの手術によって打撃に専念できた結果ともいえる。そして私が物足りないのは、三冠王にあと一歩の大谷が「1番・指名打者」ということだ。2025年はマウンド復帰を目指すというが、中途半端な登板で天性の打撃センスを邪魔するより、あの足を生かして野手としてフル出場してほしい。そうすれば日本人初の三冠王も夢ではない。
大谷がメジャーで活躍してくれるのはいいが、できることならいまの状態で日本球界に戻って「日本の野球はこういうところがいいぞ」と言ってくれるとありがたいと思っている。大谷のやっていることは間違いないのだから、日本人として前を向いて、そういう行動をしてくれたら勲章ものだ。大谷にはそれを期待している。
これまでにも野茂英雄やイチロー、松井秀喜など多くの日本人が活躍したが、莫大なカネを稼いで引退しても、いろんな肩書きでアメリカに残っている。