日本中が大谷フィーバーに沸く中
ますま拡大する「日米格差」
今年の日本人にとって、スポーツに関するいいニュースと言えば、大谷翔平ばかりです。もはやメディアも、日本のプロ野球など大きく扱いません。しかし、スポーツビジネスやスポーツジャーナリズムに関わる日本人が、この状態を見逃していいはずはありません。
たとえば、次の数字を見て、首を傾げる人は多いはずです
日本の球場の平均観客動員数は、2万9221人。それに対して、メジャーは2万9114人。そう、日本の方が多いのです。それなのに、日本人選手の平均年俸は4339万円(選手会調査)で、米大リーグの平均年俸は約7億6000万円(開幕時)。これでは、いい選手がメジャー志向になり、日本を出ていくのは当然です。
確かに、米国は人口が日本より多いですが、観客動員数が日本の方が上なら、選手の働きに報いて年俸を増やし、「メジャーの2軍」になるのを食い止める方法はあるはずです。メジャーの総収入は1兆4000億円(2022年)で、日本は1500億から2000億円(非上場の会社があるため推定額)。観客動員数が変わらない以上、他の手段での収入増をメジャーに学ぶべきでしょう。
現在のメジャーリーグはスタート時の16球団から30球団へと増え、今後2球団をプラスする計画が進んでいます。人口比で考えると、日本は人口1億2400万人で米国は3億3800万人と2.7倍の差があり、メジャーの3分の1近くの売り上げは望めるはずで、現在の7分の1という収入格差は日本のプロ野球ビジネスの完敗を意味します。
米国は野球以外にもバスケット、アメフト、アイスホッケーと観客動員数の多い人気スポーツがあるだけに、日本が球団数を増やして、さらに野球の観客を増加させるのは無理な相談とは思えません。
実際、2020年に王貞治氏が16球団構想をぶち上げたこともあります。また、安倍政権の成長戦略には2014年に16球団構想が入っていました。
プロ野球人気は、地上波での放映こそ減りましたが、観客動員数は2024年には2668万人となっています。2010年に2213万人だったことを考えると、450万人も増えていて、まだまだ人気が上昇しているのです。
これは、スポーツを実際に球場で観戦するという米国式のボールパークの発想が、日本人経営者にも根付き始めたことを意味します。数々のイベントが組まれ、ファンクラブへの優待やチケット購入システムのデジタル化が、すべての球場の観客を増加させました。私はヤクルトスワローズのファンですが、かつては3塁側(ビジターチームのファン席)から先に埋まり、1塁側にまで阪神ファンや広島ファンが入っていて、何だか寂しい思いでしたが、今は1塁側はスワローズファンで満員となり、観客動員もグーンと伸びました。
以前の16球団構想は、新潟、静岡、岡山、兵庫などが候補に上がっていました。仙台や北海道の成功を見れば、ある程度観客動員が見込める球場と人口がある地域なら、プロ野球チームの拡大は十分に可能だということはわかったはずです。