日本の未来は「消齢化」?
年齢による価値観の差が縮む

 定年退職というものがある一方で、年齢という概念や、そのあり方、捉え方は大きく変化しています。加齢は、肉体的なものであり、精神的なものであり、社会的なものです。

 ただ、平均寿命も、健康寿命も伸び、中高年のルックスも年齢を感じさせないものになりました。良くも悪くも役職や年齢、さらには年収は、従来の年齢像から切り離されつつあります。モノを言うのは、自分の肉体年齢、精神年齢、社会的年齢であり、実年齢ではありません。

 さらに、年齢による価値観の差が縮んでいますし、一部の行動は均質化しています。

 博報堂生活総研が毎年、開催する様々なテーマで10~15年先の日本の未来像を描き出すイベント「みらい博」にて2023年に提唱されたコンセプトは「消齢化社会」でした。年齢による意識・好み・価値観などの違いが減ってきていることが主な問題提起です。従来は中高年がする行動を、若年層がとったり、その逆もあったりということがありえます。

 たとえば、服装の自由化が進んだこともあり、男性のビジネスパーソンの仕事をする際の服装は、紺や黒のジャケットに、カットソーに、デニムに白いスニーカーです。メガネをする人は、太い黒縁メガネをします。年齢に関わらず、やはりアッシュブラウンぐらいのおしゃれヘアカラーをしています。これが、20代から60代まで、男性は同じような恰好です。

 高級ブランドでも、ファストファッションでも、このような服が用意されていて、男性はこの手のファッションを選びます。

 一方、従来の年齢層では考えられなかった行動パターンを、それぞれの年齢層がとるようになっています。

 たとえば、大学生がカラオケで昭和歌謡を歌っていますし、ファミレスでステーキを頼むのは中高年です。銀座や新橋で元気に飲み歩いているのも、中高年です。中高年で離婚、死別などで単身になった人はもちろん、マッチングアプリを使っています。