みずから修理を片付ける
電通で培ったスピード感

 面倒な手続きのわりに、実際の修理作業は案外シンプルなことが多いです。ドライバー1本で対応できる水回りの修理や、家庭用の高圧洗浄機で解消できる配管の詰まりなど、少しの手間で解決できる問題も少なくありません。

 ではなぜ問題がややこしくなるのかというと、そこにはひとつのカラクリがあります。管理会社は外注業者に修繕を依頼することで利益を得ているため、簡単に済ませられる修理であっても、業者を介する方が望ましいわけです。イージーな修繕ひとつでもビジネスが絡みます。

 この状況にフラストレーションを感じる住民も少なくないでしょうが、マンションの管理はビジネスなので仕方ありません。管理会社は仏のスマイルで住民のために一生懸命働きながら、鬼の形相で利益確保のための巧妙な戦略を練っています。管理会社のビジネスモデル自体がそうなっているので、恩恵を賜りたかったら従うしかないのです。

 そこで一肌脱いだのが、理事長である私。電通では多忙な業務の中で臨機応変な対応力と判断力、スピード感が要求されます。入社してからひたすらに鍛えられてきました。

 その能力をマンション管理にも活かして、業者を待つ時間を無駄にせず私が即座に対応すれば、さまざまなコストを削減できます。初めこそ不慣れでしたが、水周りの修理や配管の詰まり解消など経験を積むうちにスキルが向上。自分で言うのもなんですが、今ではお手のものです。

タワマンの壁に巨大な穴
雷が避雷針をすり抜けた?

 理事長としてあらゆるトラブルに対応し続けていると、管理人からの第一声で悪い報告が聞き分けられるようになってきます。

「理事長!」。

 その日も嫌な予感が的中しました。「マンションの壁面に大きな穴が開いているのがわかりました」と、管理人が慌てて駆け寄ってきます。話によれば、たまたま屋上で雨どいの修理作業をしていた業者が発見したらしく、落雷によって開いた穴ではないかとのことでした。