どこのマンションでも頭を悩ませているのが、「管理組合の役員になる人が足りない」という問題だ。近年は特に、区分所有者の高齢化や高経年マンションの賃貸化にともなって、より大きな問題となってきている。そうした流れの中、マンション管理の選択肢の一つとして注目を集めているのが「第三者管理方式」。一見、とても合理的に見える方法なのだが、これは本当に頼れる管理方式なのだろうか?(株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士 須藤桂一)
高齢化と賃貸化で、マンション管理組合の役員不足が加速
2025年、日本の65歳以上の人口は約3657万人に達し、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は30.3%になると予測されている。日本の現状は、実に国民のおよそ3人に1人が高齢者という超高齢社会である。
高齢化の問題はマンション管理にも大きく影響を及ぼす。マンションの場合、特に築年数の古い物件で高齢化が顕著に見られる。また、かつてドーナツ化現象といわれた郊外エリアに親の世代が購入したマンションなどは、就職や結婚などで家を出た子どもたちがそのまま戻ってくることもなく、居室の賃貸化が進む傾向にあるといえる。
マンションの高齢化や賃貸化が進むと問題となるのが、管理組合の運営が困難になってくるということである。特に高経年マンションでは、区分所有者の高齢化が著しい上、居室の賃貸化や空き家化が進むことで、そのうち区分所有者の所在がわからなくなるというケースが発生する。そのせいで、総会の運営や集会の議決にも影響が出てきてしまうのだ。とりわけ深刻なのが「役員のなり手不足」である。
マンション理事会の役員(理事や監理)は、ただでさえ敬遠されがちな役割だ。「出張が多くて時間が合わない」「子どもの習い事の送迎があって都合がつかない」「通院しているので時間が取れない」などといろいろな理由をあげて、役員就任を回避しようとする区分所有者も少なくない。そこへきて高齢化が進むことで、「高齢のため、役員の役割を果たすことができない」という理由が加わってくる。
また、居室を賃貸にしている場合、区分所有者本人はマンションの外に住んでいることが多く、物理的に管理組合の活動に参加することが難しいとして、その大半が役員就任を断ることになる。
このように、高齢化や賃貸化が役員のなり手不足をさらに加速させていく中で、この問題を解消する手立てのひとつとして脚光を浴びているのが「第三者管理方式」だ。