佐藤 米投資ファンド、ダルトン・インベストメンツは2025年2月3日付けで、フジ・メディア・ホールディングスに対して書簡を送り、取締役相談役を務める日枝久氏による独裁体制に対する懸念を示すとともに、日枝氏の辞任を求めました。

 一方で、世界の時価総額トップ企業の中には、創業者などによる独裁的な経営体制を取っていることで有名な企業がいくつもあります。フジ・メディア・ホールディングスの独裁体制と、これらのトップ企業の独裁体制との違いは何でしょうか。

ワン まず申し上げたいのは、中央集権型の経営体制そのものが問題であるとは限らないことです。

 フェイスブックを運営する米メタ・プラットフォームズやグーグルを運営する米アルファベットでは、創業者兼取締役が経営に大きな影響を及ぼし、トップダウンの経営体制が取られていることで知られています(注:メタのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏は、取締役在任約21年、アルファベットの創業者、ラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏は、取締役在任約27年)。

 ところが、これらの企業の創業者兼取締役は、メディア、アクティビスト、規制当局、独立社外取締役などから、常に厳しく執行状況をチェックされています。すなわち、実質的に意思決定を行っている経営トップが好き勝手できないような仕組みが構築されているのです。

 世界有数の投資会社、米バークシャー・ハサウェイもまた中央集権型の経営体制を取っているといわれていますが(注:バークシャー・ハサウェイのCEO、ウォーレン・バフェット氏はCEO在任約55年)、その一方でCEOが子会社の経営者に大きな裁量権を与えていることでも有名です。つまり、外からは中央集権型に見えても、内部では分散型の意思決定手法が取られているのです。

 このように、これらの世界トップ企業では、中央集権型の経営スタイルを取っていても、経営者に対する外部からの監視機能と内部統制機能がしっかりと働いています。

 ところがフジ・メディア・ホールディングスでは、長年、外部からも内部からも経営が監視されない仕組みが確立されていました。この仕組みを維持できた要因の一つが、日枝久氏による長期政権です。

 日枝氏は、1983年から40年以上、同社の取締役をつとめてきました。これは、創業者や創業家メンバー以外の経営者の在任年数としては、とてつもなく長い期間です。近年、同社の業績は悪化していますが、その主因も、内外からのチェック機能が働かず、文字通りの独裁体制が強化されてしまったからではないかと思います。